エピソード3~恋のゆくえ③冬の思い出、初体験までまだ遠い?~

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 慌てて二階に上がり服を着替えた。  今日着ようと思って用意していたお気に入りの服に着替えて髪の毛をおろした。  行き先もわからなかったから、とりあえず恒介君の家に電話してみた。事務のおばさんがいるかもしれないし。  電話をしたらやっぱり事務のおばさんがでた。 「あら、菜緒ちゃん。」 「あの、恒介君が怪我したって…。」 「そうなのそうなの。今病院だよ。お医者さんにみてもらってさ。でも、もうすぐ帰ってくるんじゃないかな。社長が付き添ってる。」 「今からそちらに伺ってもいいですか?帰ってくるの、待たせてもらっていいですか?」 「いいよ。けど、あたしも今日は五時までだからさ。子供らが家で待ってるからね。クリスマスイブだし。だから、菜緒ちゃん来たらすぐ帰らして貰っちゃうけどいいかな。」 「はい。」 「じゃあ、社長にそう連絡しておくね。」 「すいません。」  そうして下に降りていくと、母さんが私に包みを渡してきた。 「ほら、これ持っていきな。クリスマスイブだしオードブル。うちの差し入れだって大将に渡せばいい。」  大将とはいつも買いに来てくれる恒介君のお父さんのことだ。常連さんだから、好きなものはわかっている。 「ありがと。行ってくる。」  恒介君の家に着くと、ちょうど家の前にハイエースがハザードランプを付けて停まっていた。  肩をくんだ男の人二人の後ろ姿が見えた。  お父さんに肩を担がれた恒介君が車から降りてくるところだった。  そばで荷物を持って心配そうに事務のおばさんが見守ってる。 「ああ、菜緒ちゃん。」 「あ。どうも。」 「あー。菜緒ちゃんか、来てくれたのか。悪かったね。この通りの有り様だよ。」  おじさんが参ったという顔をして苦笑い。 「今日はゴメン。行けなくて。」  恒介くんも痛そうに顔をしかめながら苦笑い。 「クリスマスイブなのにごめんなー。俺が荷物運び手伝わせたばっかりに。せっかくのデート台無しだったよな。」  おじさんが申し訳なさそうな顔して背の高い恒介君を重そうに支えながら謝ってきた。 「こいつはご覧の通り動けないし、なにもないけど、うちでゆっくりしていくといい。デートに出掛けるのは、悪いけど足が治るまでお預けだな。」  おばさんがそんな様子を見ながら時計を気にしてる。 「ああ、多恵子さんはもう、あがっていいよ。時間過ぎちゃってすまないね。お疲れさま。」  おじさんが声をかけると多恵子さんと呼ばれた事務のおばさんもあたしに会釈をして帰っていった。
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