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母さんの大きい声が電話の外に漏れてないといいとあたしは顔を真っ赤して恒介くんの方をみた。
あたしが一晩付き添うなんて電話で言ったから、恒介君はなんのことかわかったみたいで、妙にモジモジと照れた様子でこっちをみてきた。
電話を切るとしばらく無言で見つめあった。照れ臭くて言葉が出ない。
「いいって。かあさん…。」
「へ?」
「だから…、その…。
怪我人だから一晩、付き添ってあげなさいって。」
「マジ?いてくれんの?」
「うん。でも、二人っきりで間違いだけは起こさないでって言われた。」
こっちも真っ赤になって照れ隠しにわざとそう意地悪を言ってやった。
「間違いなんか起きねぇよ。こんな足だし。」
恒介君も真っ赤になって少しふて腐れながら気まずく笑いあった。
「ありがと、な。」
「うん。」
「ちょっと、近くのコンビニ行ってきていい?」
「あ。なんか、いり用?」
「うん。ほら、歯ブラシとか、色々。」
「そっか。気を付けてな。」
「なんか、いる?」
「んー、アイス、食いたいな。」
「分かった。アイスね。」
とりあえず気を落ち着かせるためにも一旦一人になりたかった。
恒介くんちにお泊まり?怪我人に付き添うって言ったって。二人きりでお泊まり?
考えただけで胸がドキドキした。
コンビニで、歯ブラシと、シートタイプの拭き取りを手に取った。一応、替えのショーツも買った。一晩くらい、お風呂なんかはいらなくったっていいし、着替えなくてもいいけどね。
どうせ怪我人のそばで付き添うだけだし。でも、まあ、一応。
それからアイスね。あと、目についた小さなクリスマスケーキ。今日はイブだし。それから明日の朝に食べる用のパンも買った。気分だけでもクリスマスっぽく、ケーキとジュースで乾杯もしたいし。
思ったより色々買った。これじゃ、なにしに来たのかわからないけど。
一応、怪我人の看病?付き添い?介助?という名のお泊まりデート。
はじめてのお泊まりデートだ。
クリスマスイブだし、キスくらいはしてくれるかな。なんて。なにもしなくたって、隣で一緒にあの布団で寝たり、するのかな。なんて。
考えただけで心臓が跳ねまくった。
おうちについて玄関をあけ、玄関の鍵を閉めた。これで今日は密室に二人きり。
また心臓がうるさい。階段を上がって二階に行くとソファーで寝そべる恒介くん。
「お帰り…。」
「ただいま…。」
あれ…。なんか。これ、夫婦みたい…。
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