第2話 『会いに行こう!』

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第2話 『会いに行こう!』

霊能力者のレイちゃんは、黒猫と依頼に行く。 第2話 『会いに行こう!』  私は黒猫と共に、静子ちゃんの探している勇という人物を探して、街中を捜索したが彼に関する情報は得られなかった。  そして一日を終えた私達は、事務所に戻ってきて休んでいた。 「結局、情報なしか〜」  私はソファーに寝そべりながら呟く。黒猫はさっきまでミーちゃんが主導権だったが、いつの間にかタカヒロさんに変わっており、窓の前で欠伸をする。 「ふぁぁ〜。っていってもアイツが何も知らなすぎるんだよ。これで再開できる方がすごいってもんだ」  静子ちゃんが勇についてわかっていたことは、苗字が佐々木ということと、上京して関東に来ていたということ。  彼がどこの出身で今どこにいるかもわからない。それどころか、彼女がいつの時代に生きていたのかも分かっていない。 「ねぇ、自分が生きてた時代がわからないなんてことあるの?」  私はソファーで寝返りをうって黒猫に尋ねる。黒猫は黒い尻尾をふんふんと揺らすと、 「まぁあり得ることだ。有名になったことのショックや、未練の影響とかな。まず幽霊ってのは不安定な存在なんだ、何が起きてもおかしくない」 「ふ〜ん。じゃあ、あんたの場合はどうなの? 幽霊なの?」 「俺も……幽霊みたいなもんじゃないか? 俺の場合は未練なんてなかったが、ミーちゃんに強制的に留められてる。ま、俺もミーちゃんが心配だから抵抗しなかったしよ」 「あんたの人生未練だらけだと思ってたよ」 「おい!」  黒猫とそんな会話をしていると、シャワーを浴びていた静子ちゃんがリビングに戻ってきた。 「お待たせしました、シャワーありがとうございます」  シャワーを浴びた静子ちゃんが軽く頭を下げる。今の彼女の格好は私の昔のパジャマを貸している状態だ。  リエよりも力の強い彼女は、取り憑く対象も必要なく、さらには服の着替えもできるようだ。 「似合ってるね。よかったよ、私の古いパジャマ残ってて」 「お前がだらしないだけだろ」  横で私を侮辱する黒猫を今すぐこねくり回してやりたいが、今は堪えてソファーに座り直す。  そしてソファーの後ろの棚に置いてあった座布団をソファーに敷き、静子ちゃんに座るように伝えた。 「これからどうするか、話し合いましょ」  それから私と黒猫、静子ちゃんはこれからどうするかを相談した。この辺を探していても見つかりそうにない。  だからと言って、警察に捜索を頼むほどのものでもない。  後は私のお兄様や幸助の手を借りるという方法もあったが、迷惑をかけたくないということでそこは頼らないことになった。  だが、このまま行けば、明日も情報が得られない。そんな時だった。 「おいレイ。携帯鳴ってるぞ」  台所に置きっぱだった携帯電話が鳴り、それにいち早く気づいた黒猫が伝えてくれる。 「あ、ほんと。ナイスよ、ミーちゃん」 「おいわざとだろ! 今のは俺だぞ!?」  タカヒロさんの文句を無視して、台所へ向かい携帯電話を手に取る。電話の相手は……。 「…………レッド」  ヒーローのレッドだった。 「霊宮寺君。すまないね、こんな遅い時間に電話して!」 「いえ、それでレッドさん、なんのようですか?」 「ああ、君の探している佐々木 勇だが、情報が得られたんだ」 「本当ですか!?」  私が驚いて大きな声を出すと、黒猫と静子ちゃんも同時にこちらに目線を向ける。こちらを向いた二人に、軽く状況を伝えた。 「勇について情報があるみたい」  私がそれを伝えると、黒猫は目を丸くして驚き、静子ちゃんは静かに喜んで両手をあげた。  二人に状況を伝えたし、私は電話に戻る。 「それでレッドさん、その方は今どこに?」 「ああ、それがだな……」  レッドは言いにくそうに言葉を詰まらせる。何か問題があるのだろうか。 「どうしたの?」 「ま、まぁ、まずは彼の実家を知ることができた。霊宮寺さん、そこに向かうか?」 「勇の実家? ちょっと待って」  私は電話から耳を離して、静子ちゃんに聞く。 「勇の実家が分かったみたいだけど、そこに向かう?」  静子ちゃんはモジモジしながら、 「はい。行きたいです」 「分かった。それじゃあ、レッドさん、その場所教えてもらえるかしら? 私達で行ってみるから」  電話に耳を当てて、行くことを伝えた。しかし、 「そうか、分かった。なら、君の家の屋上にいてくれ、これから向かいに行く」 「向かいに行く?」  私がどうしてなのか尋ねようとしたが、間に合わずに電話が切られてしまった。 「ちょ、待ってよ!?」  電話を切られて、私がどうしようか迷っていると、黒猫がやってくる。 「んで、どこだか分かったのか? レイ」 「それが……向かいに行くから、屋上で待ってろって……」 「なんだよそりゃ……」 「私が聞きたいよ!! 勝手に電話切ったのよ! これからどうするのか、全くわからないのよ!」 「お、おい。俺に当たるな、俺とミーちゃんは関係ないだろ……こねくり回すな、や、やめろぉーー!!」  念のため着替えて、私と黒猫、静子ちゃんは屋上へと移動した。  私が事務所を構えるマンションの屋上は、基本的には何もなく。端っこの入り口方面に、植木で野菜が植えてある程度。  建物自体はお兄様のものだが、管理人は別で雇っており、この野菜はその人のものだろう。  屋上でしばらく待っていると、夜空の向こうからなにやら翼の生えたものが飛んでくる。  動物ではない。羽がピンと横になり、後ろのエンジンで飛んでいる。しかし、飛行機というには小さいし、デザインも変だ。  よ〜く観察してみて、その正体にやって気づいた。 「なにあれ!?」  それは鳥のデザインをした小型のジェット機。まるでヒーローモノの乗り物のようなデザインをしたそれが、屋上の頭上に着くと、ポケットに入っている携帯電話が震える。 「はい。霊宮寺です……」 「やぁ、霊宮寺君。私だ、レッドだ、今、専用のロボットに乗っているが見えるかい?」  なんとなく、誰からの電話だか予想はついていたが、予想通りにレッドだった。 「え、ええ、レッドさん。今上にいるんでしょ……」 「うむ。どうやら準備もできているようだね……。今からロープを下ろすよ」  レッドがそう言うと、ロボットからロープが垂れてくる。これを伝って登れということか。 「こんなのできるわけないじゃない!!」  こっちには黒猫に静子ちゃんがいるんだ。てか、私もこんなの登れない。  私は助けを求めるように黒猫の方を見るが、 「かっけー」  黒猫はロボットに見惚れていた。まぁ、予想通り……。そして静子ちゃんは訳がわからないのか、口を開けてポカーンとしている。 「レッドさん。これじゃ登れないよ!」 「そうか。了解した。では近くの公園に着陸しているよ。君達はそこで乗ってくれ!」  レッドからの通話が切れると、ロボットは近くの公園に向かって飛び去っていった。 「…………勝手すぎる」  レッドがロボットで向かいにきたが、どこまで連れて行かれるかわからないため、念のため事務所に戻って準備をすることにした。 「ねぇ、タカヒロさん。まだ〜?」 「待て。なにが必要かわからないだろ。それにミーちゃんのケア用品は絶対忘れちゃいかん!」  私と静子ちゃんは支度を終えたが、黒猫の準備が長引いていた。 「なんでアンタが一番時間かかってるのよ」 「すべてはミーちゃんのためだ。……っと、レイ。これ持ってかないのか?」  支度をしながら黒猫はテーブルに置きっぱなしになっていた携帯について聞く。 「あ! 危ない! 忘れるところだった!!」 「ふ、お前はいつもそうだな。だらしないんだよ、俺みたいにもっとしっかりしろ」  テーブルに乗り、威張るように座る猫に私はイラっとする。 「なによ、アンタのどこがしっかりしてるのよ。いつもいつも寝てばかりじゃない」 「それはミーちゃんだ!」 「いいえ、アンタよ。私にはわかるよ」  私は黒猫は顔を近づけて睨み合う。そんな様子を見て、静子ちゃんは突然、ふふふと笑い出した。 「仲良いですね、二人とも」 「「はぁ? どこが?」」  私とタカヒロさんが文句を言うが、静子ちゃんは笑い続ける。そして懐かしむように窓から外を見た。 「私。唯一喧嘩したことがあるのが、勇さんでした。だから二人の姿を見たら懐かしくって」  窓を見る静子ちゃんの姿はどこか寂しげに見える。そんな姿を見て黒猫はやれやれと尻尾を振ると、 「懐かしむ必要はないよ。再開できるんだからよ」 「そう、ですね。これも皆さんのおかげです」  準備を終え、私達が公園に到着すると、公園の前に一台のパトカーが止まっていた。そしてレッドと警官がなにやら話している。 「どうしたんだろう?」  私達が理由を聞こうと近づくと、レッドは警官にペコリと頭を下げた。 「ほんと、すみませんでした!!」 「まぁ今回だけだよ。ロボットを路上駐車しちゃダメだから、今度から気をつけるんだよ」 「はい!!」  どうやら、ロボットの駐車で問題になったらしい。  レッドは免許証を警官に返され、警官はパトカーに乗って交番に戻って行った。  黒猫は頭の上で尻尾を振りながら、 「ロボットって路上に止めちゃダメなんだな」 「そうみたいね〜」  とりあえず、レッドも無事に終わったようだし、私達は合流する。 「レッドさん、大丈夫ですか?」 「や、やぁ霊宮寺君……。もう少しでロボットの講習に参加させられるところだったけど、大丈夫だよ。それじゃあ、乗ってくれ」  レッドに案内されて、ロボットの中へと入る。ジェット機のような見た目をしているが、中は意外と広く、操縦席の後ろには休憩スペースがあった。  私達はその休憩スペースの椅子に座る。キャンピングカーのような内装で、冷蔵庫なんかも設置されている。 「それじゃあ、出発するよ」  操縦席に座り、ロボットを動かそうとするが、その前に聞きたいことがあった。 「待って。その前にどこに行くの?」 「ああ、そうだったね。まだ言ってなかった。佐々木 勇君。彼に関する情報をくれたのは、沖縄にいるヒーローだ。そこで沖縄に彼の実家があるという情報を得たんだ」 「沖縄って……」 「では、出発だ!!」 「え、ちょまっ!?」
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