8人が本棚に入れています
本棚に追加
三村朔、三十五歳を被疑者死亡で書類送検
臨場した刑事一課の出した結論は心中だった。男女のもつれと結論付けたらしい。
【アタシが全て殺りました】
犯行を結論付ける遺書が、仁史の血痕で床に書かれていた。俺が来ると見越した上での犯行だろう。
【六年前の単独事故及び、今朝発見された事件もアタシの犯行です。アタシはさおりに愛されたかっただけ。この気持ちは伝わることがないまま上岡さおりを埋めました】
「友人の女が妻そっくりに現れて、かつて雇っていたホストと知ったとき、上岡さんはどう思っていたんでしょうね」
俺は、レモンの飴をがりっと噛んで顔をしかめる。部下は事件の結末について、俺の推論を聞きたいらしい。
「死人にくちなし。三人しか知らない感情だったとしか言えねぇだろう」
上岡仁史はあの世で妻、さおりと再会を果たしたことだろう。
再び会えた三人は幸せなのか、それはあの世の三人しか知らない。
「幸せだといいですね」
楽天的に考えている部下に苦笑する。
上岡さおりにしてみれば、自分を殺した相手と再会して幸せだと思えるわけがない。
「とことんのんきだな。惚れた腫れたが恨みになっているんだ。不幸せだろうに」
気持ちのすれ違いが起きなければ、余計な一言を言わなければ・・・
たらればを思っているのは上岡夫婦かもしれないな。
終
最初のコメントを投稿しよう!