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あなたになるね
六年前、アタシは本物のさおりと山の上にあるカフェで数年ぶりに再会した。
『さおり、久しぶり!!』
『×××なの?なんで、私に似せてるの?』
アタシはさおりに憧れを抱いていた。幸せと聞かされるたびに、さおりが手に入れていたものが欲しいと思っていた。
『アタシ、仁史さんみたいな人いいなって思って、そのためなら変えなきゃなって思ったの!!変かしら?』
ツーショット写真を見せられたとき、イケないとわかっていても、ドクンと鳴る高鳴りが止まらなかった。
『変だよ。気持ち悪いよ・・・それに私に似せなくてもモテるって言ってたじゃない』
お客さんにはモテるのよ
酒臭い息を吐く客にはね
『×××ごめんね。帰る』
せっかく再会したのに、さおりの顔は青白くなっていた。立ち上がるとふらついたからアタシが介抱してあげたのに・・・
触らないで!!
ものすごい怒って、そんなのアタシが焦がれたさおりじゃない。まるで、別人じゃない。それでも、アタシは優しくして、さおりの車を運転して、山道の路肩に停めたの。
*
『さおり、起きて?起きてよ』
コーヒーに入れた睡眠薬が効きすぎたのね。まぁ仕方ないわ。
そうして、アタシはさおりの衣服を脱がし始めた。さおりには、アタシが着ていた服を着させて、あらかじめ用意していた穴に埋めたのよ。
設営していたテントを畳み、肩にかけ、斜面を登る。
さおりの車に戻ると、アクセルの上にテントが仕舞われたバックを乗せて。
もう一度斜面に戻ると、ガス缶数本を胸に抱えて車へと戻り、燃えやすい位置にガス缶を置いて、エンジンをかける。
パーキングからドライブへと切り替える。
ブオンブオンとアクセル全快になったさおりの車は直進し、ガードレールを突っ込み、木々に激突し爆発した。
「さおりが愛した人、愛せるかしら」
山火事を起こした事故はニュースとして報じられるだろう。運転手がいないことが事件性としてみられるくらい。
アタシはさおりを埋めた近くの木々に頭を数回殴打して、血が出てくるのを確認してから、燃える車の数キロ先まで行き、気絶した。
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