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木藤が見たものは
上岡仁史のスマホにかけても応答がない。俺は胸騒ぎを感じ、バディを組んでいる部下と共に、上岡家へと向かう。
森の中のログハウスに着き、車を停車させると、葉や枝をバキバキ、ミシミシと踏みつけていく。
「長閑ですね」
「そう思うのは気が緩んでるからだ」
警官人生が長い俺にとって、この静寂は事件のにおいがしてならない。
玄関は施錠されている。屋根上の煙突には、白い煙がもくもくと空へと流れている。
「上岡さん、いますか?県警です。上岡さんいますか」
部下に玄関で呼び続けているように指示すると、俺は裏手へと回る。
窓から見えたのは、さおりに似た女、名前は未だに思い出せない友人が、顔面に血を浴びながら微笑み、こと切れた上岡仁史を膝にのせている姿だった。
「捜査一課に入電しろ!!事件だ」
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