木藤が見たものは

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 三村(みむら)朔、三十五歳を被疑者死亡で書類送検  臨場した刑事一課の出した結論は心中だった。男女のもつれと結論付けたらしい。 【アタシが全て殺りました】  犯行を結論付ける遺書が、仁史の血痕で床に書かれていた。俺が来ると見越した上での犯行だろう。 【六年前の単独事故及び、今朝発見された事件もアタシの犯行です。アタシはさおりに愛されたかっただけ。この気持ちは伝わることがないまま上岡さおりを埋めました】 「友人の女が妻そっくりに現れて、かつて雇っていたホストと知ったとき、上岡さんはどう思っていたんでしょうね」  俺は、レモンの飴をがりっと噛んで顔をしかめる。部下は事件の結末について、俺の推論を聞きたいらしい。 「死人にくちなし。三人しか知らない感情だったとしか言えねぇだろう」  上岡仁史はあの世で妻、さおりと再会を果たしたことだろう。  再び会えた三人は幸せなのか、それはあの世の三人しか知らない。 「幸せだといいですね」  楽天的に考えている部下に苦笑する。  上岡さおりにしてみれば、自分を殺した相手と再会して幸せだと思えるわけがない。 「とことんのんきだな。惚れた腫れたが恨みになっているんだ。不幸せだろうに」  気持ちのすれ違いが起きなければ、余計な一言を言わなければ・・・  たらればを思っているのは上岡夫婦かもしれないな。  終
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