探偵殿の悩みごと

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探偵殿の悩みごと

 息苦しくなるような夏の暑さもいくらか和らぎ、窓から心地よい冷えた空気が入ってくるような秋の始まりの夜。時計は午前2時を回ったと告げている。とある悩みに悩まされ、にっちもさっちも行かなくなっていた私は、気晴らしに散歩へと出掛けた。そこで、人生でもそこそこ、目にしたくないものを発見してしまった。  たぶんこれを隠した人物だって、誰かに見つけられたくはなかっただろう。しかし隠したというにはあまりにお粗末な工作は、街灯に照らされ異様な存在感を放っている。私は一呼吸置いてから目を逸らし、道路の向かいにあるコンビニを眺めながら考える。 「私が通りがかった痕跡……は、あったところで近所だから問題ない。この時間帯にここを通りがかったと、誰かが証明できるはずもない。真横を通る車も疎らで、その中で誰が、こんなしがないオッサンを覚えていようか」  向かいのコンビニでは店員がほうきを小刻みに動かしながら、たむろする若者にチラチラと目線を送っている。こちらに気づかれる前に、なんてことのない速度でまた、私は歩き出した。ぼんやりしたこの冴えない男は、道路の反対側にある田んぼの、そこそこに量のある枯藁の中に見えたかもしれない何かには、気づきもしなかったことにする。  しかし、たとえ第一発見者が見向きもせず通り過ぎたからと言って、それがなかったことになるわけではない。翌朝、窓の外にはがやがやと騒がしい、尋常ではない人だかりと、週末の穏やかな朝に似つかわしくない、数台のパトカーが近くに止まっていた。 「……何か、あったんですか?」 「遺体が見つかったんですって」 「ええ……怖いですね」  わざとらしい顔をして、わざとらしすぎないよう声を作って、見ず知らずのご婦人に相槌を打つ。聞けば田んぼの中に、体の半分程度埋められた女性の遺体が発見されたそうだ。暗闇で見えたヒールのようなものは、確かにそれだったのだろう。ご婦人の娘さんが第一発見者らしく、彼女の隣で可哀想なほど肩を震わせている。  聞いてもいないのご婦人は、鼻息荒く見えた事情を事細かに教えてくれた。ナイフか何かで胸を何度も刺されていたらしいだとか、凶器は見つかっていないとか。  話を聞いている内に、いつの間にかブルーシートで現場は覆われ、見えなくなったところで人混みは散り散りになっていく。残っているのは、SNSで何かしら発信したいらしい若者たちと、同じようにカメラを向けるマスコミ、不安そうにブルーシートを見つめる女性たちとコンビニ店員が一人。まあ、自分の近くでこんなことが起これば、そんな顔にもなるだろうか。 「あれくらい顔をしかめておいた方がよかったか……私も、彼女も」  ブルーシートに隠されたとき、散り散りに去って行った人混みに紛れて、自分と似た顔をした女性が一人いたのが気になった。興味本位に覗き込むでも、事件を訝しむでもないその目は、おそらくは昨晩の自分と同じように、自身の痕跡の有無が気になっていたのだろう。  こういうのを発見してしまうのも、自身の性だろうか。 「嫌なものが見えてしまうこんな習性なんて、お断りですけどね」  独り言をぼやきながら、私は女性が背を向けた方向へ歩き出す。ちょっとでも、自分の悩みが解決する糸口はないかと期待していたのもある。いや、あの遺体の隠し方からして、おそらく期待はできないのだろうが。せめて何か、失敗から何か学べないだろうかという淡い思惑があった。  女性は道路を渡って、やがてコンビニの奥のマンションへと消えていった。やや早足な様子だったので、やはりこの状況は気が気ではないのかもしれない。焦る心理は人を過ちへと突き飛ばす。ともすれば、どこかに大きなミスでもあるのではないかと、私はコンビニへ立ち寄る。 「いらっしゃいませー……あ、お客さん」 「……何か?」 「お客さん、あの現場にいましたよね」  彼の言葉にぎくりと口が引き締まり、目を見開いてしまう。余計な反応をしてしまったかと、どっと冷や汗が吹き出すのをよそに、店員はへらへらと笑って雑談を始めた。 「でもちょーっと来るのが遅かったですねぇ。すぐブルーシートで見えなくなっちゃったでしょ」 「ああ、そんなにじっくり見てたんですか?」 「人間、好奇心には勝てませんよ。いやあ、怖いですよねえ。近場であんなことが起こると」 「ああ……そうですね」 「まああれで、ここでたむろする人が少なくなればむしろ嬉しいんですけど」  ため息をつきながら話すのは、おそらく昨晩見たあの光景だろう。夜のシフトにも居て、かつ今朝もここにいるということは、このコンビニにはあまり店員がいないらしい。注意する者もろくに居ないから助長されているのか、彼の目は期待というより憎しみが籠もっていた。ひょっとすると、あの若者たちの中に犯人がいるのではないか、とさえ考えているかもしれない。  余計なことを考えつつ、店内をぐるりと一周してからおにぎりを2個ほど手に取り、レジに向かう。 「朝飯ですか。食べられます?」 「場所があれば大丈夫ですけど……たむろするのはご迷惑ですよね」 「あー、じゃあ、裏手のゴミ箱のそばならいいですよ。一人くらいなら」 「ありがとうございます」  なんとも言えない顔をされ、首を傾げつつ私はコンビニの裏手へと回る。言っていた通り、裏手には表の小さな、分類ができるゴミ箱とは違う大きな蓋付きの箱が置かれていた。どうやら従業員用らしく、黒い塗装に見えたそれは錆まみれだ。腰をかけるのは気が引けたので、建物の壁に寄りかかりながらおにぎりを一つ頬張る。頬張りつつ、先ほどのマスコミが速報でも流していないかと、ニュースアプリのトップを開く。 「さすがに、まだ早いか……」  出てくるのは同じく近場ではあるものの、別件の通り魔事件ばかりだった。物騒な地域だと思いつつ、おにぎりを食べ終えた右手で錆びた臭いのするそれに手を伸ばし、右側のゴミ箱を開けてみる。 「……捨てるなら、ここかなと思ったんですけどね」  開けた中には、口を縛られたビニール袋がぎゅうぎゅうと押し込められていた。一つ一つを開けて調べるつもりはないが、全て結び口が同じに見えるあたり、どれも先ほどの店員が突っ込んだものだろう。あんなずさんな隠し方しかしない犯人が、これを真似て凶器やら証拠やらを隠すなんてできるはずもない。  では左側か。興味もさしてなくなってきているくせに、答え合わせだけはちゃんとしようとする己の態度に呆れつつ、手を伸ばす。中途半端な興味本位で彼女も暴かれたくはないだろうに。そう、ぼんやり考えて油断していたせいだろうか。突如現れた、右手を掴む誰かの手に私は大げさに後ずさってしまう。 「どうも。お食事中すみませんねぇ」 「……あなたは?」 「自分は捜査中の警官です。お話を伺っても?」 「なるほど。どうぞ」  おにぎりと心臓が一緒くたに飛び出そうになるほどこちらを驚かせてきた女性は、先ほどのブルーシートの内側にいた人物だという。一呼吸置いてから私は、ありきたりな質問に、ご婦人から聞いた話でありきたりな回答を返していく。 「ところで、あなたはなぜこんなところで朝食を?あ、ここの店員さんですか?」 「いえ、近所に住む者です。出てきたついでに、朝飯でもと思って」 「随分肝が据わってますねぇ。ちなみにどうして、ゴミ箱を?」 「……店員さんが、使ってもいいと教えてくださったので」  テンプレートの質問は終わったはずなのに、大して情報を持たない私に彼女は食い下がった。雑談が好きなのか、はたまた探偵気質なのかはわからないが、彼女は私から目を逸らさずに話を続ける。 「両方のゴミ箱を開けた理由は?」 「どちらに捨てるべきか、確認しておこうと思って」 「ご飯を食べながらゴミ箱開けます?」 「一度気になると、考えなしに動くタチでして。あと、少し神経質なんです」 「神経質な人が、遺体の遺棄現場見た後におにぎり買って、それを食べながらゴミ箱を調べます?」  なるほどそれは一理ある、と私は頷く。けれど、そこまで合理的に日々を生きるほど人は器用な生き物でもないとも思う。まるで私の目的を見透かしていて、それに答え合わせをするためだけの尋問のようだった。彼女は私の推測に答えるかのように、左側のゴミ箱を開けて小さなビニール袋を取り出した。 「私はてっきり、あなたがこれを探していたのかと思いましてね」  半透明のビニールにはティッシュか何かが詰め込まれているのと、そこに赤いものが滲んでいるのが見える。目の前で彼女はその袋を開き、うん、と頷いて確認する。神経質で食事中の私のためか、中身は出さないままだった。  警察がすぐ近くにまだいるにも関わらず、そんなものを隠した場所へわざわざ赴いて、悠長に飯を食いながらそれを確認するほど犯人も馬鹿ではないだろう。しかし今しがた、人はそれほど合理的な動きが出来るものでもないと、自分で否定したばかりだ。どこかへ連絡をする彼女に何を言われるのかと身構えていると、こちらを向いて彼女はにんまりと笑みを浮かべた。 「顔色一つ変えませんねぇ。ああ、別にあなたが犯人だとは疑ってませんよ。警察の目と鼻の先で、のんびりおにぎり食べながら凶器の隠し場所を確認するようなマヌケなら、私が名乗った時点でさっさと逃げるでしょうし」  そう言われ、私は思わず面食らってしまう。まあ、証拠隠滅前に腹ごしらえなどはさすがにしないだろうと、思ってくれたのなら何よりだ。  しかし、彼女は疑うでもない私のそばを離れず、私が二つめのおにぎりを食べきるまでじっと、その場に立って待っていた。居心地の悪さを感じつつ、ゆっくり咀嚼し飲み込んでから再度、視線を合わせる。 「……まだ何か?」 「ええ。折角なのでもう少し話を伺おうかと」 「私の疑いは晴れたのではなかったんですか?」 「疑ってはいませんよ。犯人とはね」 「……というと?」 「犯人でもないくせに、凶器の在処を警察よりも先に嗅ぎ当てるその優秀な推理力を、ちょーっとお借りさせてもらおうかと」  にぱ、と明るい、人のよさそうな笑みを浮かべ、彼女はあっけらかんとそんなことを言いだした。まさかこの警官は見ず知らずの一般人に、探偵の真似事をさせようとしているのか。とんでもないことを言いだす彼女に、日本の警察はここまで追い詰められているのかと心配になる。  彼女は私の無遠慮な視線など気にも留めず、ゴマを擦るようにわざと手を揉みながら私の言葉を待った。 「さあさあ、おにぎり探偵殿ぉ。この事件、どう見てらっしゃいます?」 「探偵ではありませんよ、私は」 「そうですか?同じ野次馬の一人に目をつけて後を追ったり、コンビニ店員に事情聴取したりと、まるで探偵のような所業じゃないですか」 「……」  前者はともかく後者は、と言いかけて閉口する。半端な弁明はかえって億劫だ。どうやらただ興味本位で私を選んだわけではなく、それなりに理由もあるらしい。挙動を見られていたのなら、ここで協力するのを辞める方が不自然だろうか。ため息をつきつつ、無難な程度の推理を話すことにした。 「……その野次馬の一人に聞いて、思うところって程度ですが。おそらくは計画なき犯行だったのだろうと思います」 「と言いますと?」 「半分だけ埋まっていたそうじゃないですか。あとは田んぼにあった、枯れた藁草ですぐバレる幼稚な隠蔽……遺体の隠し方があまりにお粗末すぎます」 「ほうほう」 「そして凶器も、隠すにはあまりに現場から近すぎる。計画性のなさが見て取れます」 「まあ、そうですねえ」 「が、であればどうして犯人は、そのとき凶器を持っていたのでしょうね」  お、と笑みをたたえながら聞いていた、彼女の顔色が変わる。この程度まで話せば少しは役に立っただろうかと、凭れていた壁から離れようとしたのだが、彼女はペットボトルのお茶を私に差し出しながら、続きを促した。 「探偵殿は、どうお考えで?」 「だから、私は探偵ではないんですが……、そうですね。めった刺しにしていたということですから、おそらくは確実に息の根を止めようという殺意はあったはず。けれど、そこで犯行を行うつもりはなかった。……ならば、凶器を持っていた理由は別にあったのではないでしょうか」 「別の、理由」 「そう。たとえばある目的で凶器を使った帰り道に、犯人は被害者に出会い、慌てて刺すことになった。きっと、同じ用途で使ったために、迷いがなかったんでしょうね」 「……あ!」  スマホをポケットから出して、先ほどのアプリをもう一度開く。近場で起こったという、通り魔事件の記事を見せると、彼女は大きく口を開けて驚きの顔を隠さなかった。おそらく被害者は、この通り魔事件の犯人を見てしまい、口封じのために殺されてしまったのだろう。それこそ、慌ててずさんな犯行を犯してでも、犯人が人を殺したかった理由なのだ。 「……お見事!」 「いえ、あくまでも予想と妄想程度でしかありませんが」 「いやいや、十分可能性が考えられますよ。さすがは探偵殿」 「私は探偵なんかじゃありませんよ。……ただのミステリー好きの、しがないおじさんです」  彼女は拍手をしながら私を大げさに讃えるも、次の瞬間には背を向けてまたどこかへと連絡をし始めた。そっとその場を離れようとしたとき、彼女が笑顔で私に手を振ってきたのが最後の挨拶だった。  十二分な推理だったかとふと、我に返る。あのずさんな犯行のことだ。どうせ凶器は見つかったのだから、指紋やら何やらで犯人はすぐに捕まるだろうに。そうでなくても、埋めるときに田んぼに入り込んだであろう、靴の痕跡もあるはずだ。もしかすると、すでにある程度の目星は突いていたのかもしれない。  その上で、彼女は私に話をさせたのだとすれば相当な曲者か、奔放な性格をしているかのどちらかか。 「まあ、どちらでもいいことだけれども。犯人には少し、同情するが」  アパートへ帰り、冷凍庫の扉を撫でる。そりゃあ、犯行現場なんて見られれば誰でも焦るだろうという同情する気持ちと、結局予想通り、参考にはならなかったなという残念な気持ちが入り交じる。一人暮らし用のアパートに備え付けられた小さな冷凍庫は、開けばバラバラにして詰め込まれた「肉」がみちみちに詰め込まれている。 「ある程度は処理したつもりだけれど……絶対にバレないようにするのは、やはり難しい」  有名文学や受賞した名作などよりは、やや知名度の劣るミステリー小説を参考に、いくつかのパーツは隠滅してきたつもりだ。しかしそうは言っても、やはり手元にない状態は心許ない。リアリティのない物語では、さすがに無理がありすぎることも多い。物を隠すのに都合の良い、人がほとんど足を踏み入れない山奥や、決して足のつかないレンタカー、融通の利く裏家業とのコネも、一般人にはあるわけがない。 「さて……次は海底の奥底にでも沈めにいきましょうか」  そんなことを考えながら、冷凍庫を閉める。これがあったせいで、この夏はアイスをろくに食べることができなかった。次の引っ越し先ではもうひとつ小型の、冷凍庫を別で用意すべきだろうか。  和室に無造作に置かれたデスクに向かい、仕事を片付ける。在宅の仕事は身軽でいい。職場との距離などに縛られることもなく、こうして自由に秘密を処理しに引っ越すことも出来る。そんなありがたみをひしひしと噛みしめながら、今日の業務に取りかかった。  それからしばらく経った、秋も深まる平日のお昼過ぎに、珍しく呼び鈴が鳴った。宅配便でも頼んでいたかと、重い腰を上げて玄関に向かう。開ける瞬間に聞こえた、「警察です」の言葉に、ひゅっと喉が鳴った。 「どうも。お休みのところすみませんねぇ」 「……お久しぶりです」  扉の先にいたのは、例の女性警官だった。にこにことあの人の良さそうな営業スマイルを携えながら、なんてことない様子で私に手を振っている。 「いやぁ、急にすみませんね」 「今日も聞き込みですか。お疲れ様です」 「いやいや、今日は探偵殿に会いに来たんです」 「……何か?」  自分に会いに来た、という彼女の言葉に心臓がきゅっと縮む思いだった。どうしてここがわかったのかとか、冷凍庫の中身まで見透かしてのことなのかと、あまりいい気がしないまま眉間に皺が寄る。  しかし、私の予想に反して彼女の用件は優しいもので、要はどうやら、あの事件の結果報告に来たらしかった。 「探偵殿の推理が見事的中していましてね。これはぜひともご本人に感謝を伝えねば、と思いまして」 「そうですか。金一封でも出たりします?」 「残念ながら、コンビニ飯一袋ですねぇ」  へらりと笑いながら、あの日食べていたコンビニのおにぎりとお茶のペットボトルの入った小さな袋を彼女は差し出す。まさか、本当にこれだけのために来たわけではあるまいと、受け取って礼を言いつつ彼女をじっと見つめる。 「どうされました?」 「いや……これだけのはずがないだろうと思ってるんですが」 「さすが探偵殿。話が早い。実は、捜査の行き詰まった事件のご相談がありまして」 「いやいやいやいや、話さないでくださいよ。私、協力しませんからね」  彼女の言葉に、私はそっと扉を閉める。しかし、それよりも先に彼女の革靴がガッと隙間に入り込み、それを許さない。 「……私、探偵でもなんでもないしがない一般人ですよ」 「しかし、我々の力になってくれたじゃないですか」 「想像を語って、たまたま合ってただけですよ。一般人に、捜査の内情を話すつもりですか」 「どうか、私と探偵殿の二人だけの秘密と言うことで……」 「バレたらただじゃ済みませんよ、あなたも私も」  これ以上悩みのタネを増やしてたまるかと、私は強い意志を持って首を横に振った。しかし、彼女は隙間に手を突っ込んで私を引き留めるため、一枚の写真を差し出してきた。 「とある山中で、腐敗した胸のパーツが見つかった事件があるんです。ただ、本当にそれが見つかっただけで。被害者が誰かも分からず、捜索願の出ている人にも該当しなくて、正直お手上げなんですよ」 「……」 「……藁にも縋る思いなんです。どうか、何でも良いので思いつくことを。ほんの少しでもお力添えを……」  本来なら、もらったおにぎりを突き返してでも断るべきだっただろう。しかし、事情が変わってしまった。写真では暗くぼやけていてよく分からないが、おそらくこれは、自分の隠したパーツの一つだ。見つかってしまったかという落胆と、その程度しか調べがついていないのかという安堵感に、私は揺らいでしまう。  もしかすると、私にできることは完璧な遺体破棄の計画ではなく、警察の捜査を誘導し、絶対に見つからないよう仕向けることではないだろうか、と。 「……私は、あくまでも一般人ですからね」 「ええ、ええ!実際に足を運んで捜査しろなんて言いません!推理の力を貸していただければ十分です!」 「……では、おにぎり二個分の働きくらいはしましょうかね」  警察がどこまで掴んでいるのか把握できれば、少しは私の気持ちも晴れるだろう。こうして、殺人鬼と警官という、奇妙なバディが生まれてしまったのであった。
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