2人が本棚に入れています
本棚に追加
私の人生が一変したあの日の夢。
あの日、私に襲い掛かってきたのは一台の乗用車だった。
襲い掛かってきた、と言っても狙われていたわけではない。
居眠りだか脇見だかでハンドル操作を誤ったらしい。
そんな車の突撃を半ばもろに食らったのが私という事らしい。
だが、私は死ななかった。
とても幸いとは言えない。死に損ねたと言った方が正しいだろう。
あの日、私に本来備わっていたはずの、人としての様々な機能は奪われてしまったのだ。
それ以来、横たわったきりの生活を過ごしている。立つだけならできるが、歩くことはできず、腕もわずかに動かすことができるだけ。喉が潰れたせいで言葉も奪われた。
地獄がそこから始まり、それは今も続いている。
いつか何かの形でこの機会が訪れるのは分かっていた。
ベッドの横にかけられた鏡。首を動かせば見ることができる。
そこに映るのは紛れもなく、あの日の老人の顔なのだから。
本当に夢だったら、どんなに良かっただろう。
泣きたいが、涙を流す機能はあの日失ったままなのだ。
最初のコメントを投稿しよう!