4人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「横河せんぱーい、お疲れ様ですぅ」
「お疲れ様ー」
1ヶ月後の文化祭に向けて、我が文芸部は張り切っていた。
僕、横河佑が通う南谷高校は、どんな運動部でも強豪校に名を連ねる県内屈指のスポーツ校である。そんな高校だから、文化部はもちろん肩身が狭く……文芸部に至っては部員は僅か3人で部と認められている事が奇跡だった。
「文化祭で来年の新入部員をゲットするぞーー」
「おー」
来年、部長の僕と副部長の海原友奈が卒業してしまったら、書記の山本璃々は1人になってしまう。これは由々しき大問題。
文芸部、存続の危機である。
文化祭は体育祭より地味とはいえ、我が校を志望する中学3年生の子達が見学がてら、遊びに来る機会だ。
「1に笑顔。2に笑顔。3、4が無くて、5に笑顔よぉぉ!」
「おー」
副部長の友奈の掛け声に璃々は声を高く同調し、拳を天井に向かって上げた。2人は笑顔の練習に余念なく、鏡の前で明るい表情を作る。優しい先輩がいるよ作戦を決行するようだ。
…………なんか違う。
僕は少し呆れながら、笑顔の練習をしている2人を横目に文芸部らしく小説を執筆したり、資料をまとめたりしていた。
卒業した先輩が残してくれた文化祭の資料を片付けていると、可愛らしい手作りの小冊子が目に入り、手に取った僕はパラパラとめくってみる。
最初のコメントを投稿しよう!