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一通り僕のネタを話し、満足したのか、璃々が好奇心を隠せないキラキラした目で僕に提案する。
「じゃあ、先輩。野々島先輩を文化祭に誘って『月が綺麗ですね』って、言ってみたらどうですかぁ?」
「はぁ!? そんな事……」
明らかに面白半分の様子に僕は顔を歪めたが、友奈が璃々の提案にうんうんと頷き、僕の言葉を遮る。
「いいかもね。もう先輩が卒業してから1年以上だもん。先輩だって彼氏と別れてるかもしれないし。こんな小冊子を文化祭で配っていたくらいだから、たぶん先輩『月が綺麗ですね』なんて言われたら、喜ぶんじゃないかしら。『死んでもいいわ』って言われちゃうかもよ?」
「……っ! そ、そんな事、あり得るわけないだろ! もういいから文化祭の準備しろよ!」
僕は女子2人の目の前に資料の束をドンと置いた。生き生きと楽しそうな顔から一転、うんざりした顔になった友奈と璃々に、にっと笑い掛ける。
「この資料の整理、今日中に終わらせたいから」
ブーブーと文句を言う女子を尻目に、僕も自分の作業に没頭している振りをした。
そんな……卒業以来会ってない野々島先輩に告白しろだって? そんな事できるわけ無いだろ……
2人のせいで、心の奥にしまい込んでいた野々島先輩への淡い恋心を思い出し、胸のドキドキが止まらない。
僕は平静を装い、黙々と資料を片付ける。
まさか、この数時間後に告白して玉砕するとは夢にも思わずに。
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