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「失礼します…」
緊張し、恐る恐るドアを開ける遠野。
どこにでもあるような一般的な事務所。
一番最初に応接用のテーブルとソファーが目に飛び込んでくる。
そしてそこにいた一人の男が応対に当たった。
「こんにちは!奈っちゃ…あっいや、安藤奈津さんの紹介の方ですね?」
爽やかなイケメンの男、黒のジャケットにタイトなパンツ。キレイ系のきっちりとしたファッションで身を固める。
しかしスタイリング剤をしっかりと使い整えた緩いパーマににっこりと優し気な表情は、そのファッションに相反するようにどこか小洒落た雰囲気を醸し出し、警戒心を和らげた。
「私は雲雀心霊探偵事務所の斎藤と申します。どうぞこちらへ…」
そう言って中央のソファーへと促す。
遠野は軽く会釈すると、斎藤に導かれるままソファーへと腰を下ろした。
「少々お待ちください」
そう言うと斎藤は事務所の奥へと姿を消す。
「奈っちゃん、飲み物お願い。それと俺はキョウさんに声かけてくるから相手お願いね」
「わかりました」
遠野が聞こえるか聞こえないかの会話に耳を傾けていると、奈津がお盆を持ち奥から姿を現した。
「こんにちは先輩。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。みんないい人ですから」
そう言うと奈津はコーヒーを遠野の前に差し出す。
「あぁ。ありがとう…」
「じゃあ雲雀さん。…ここの所長の雲雀恭介さんは奥で電話中なので、少し待ってて下さいね」
「わかった」
そう言うと遠野は改めて周りを見渡した。
心霊探偵事務所というからには。変な絵やツボ。お札などがびっしりと…など想像していたのだが、正直拍子抜けをしたのだった。
(普通の事務所だ…)
そう思いながら出されたコーヒーを啜る。
「美味い…」
思わず口に出てしまい、それを見た奈津がクスリと笑った。
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