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暫くすると奥から一人の男性が姿を現した。
遠野は一瞬身が固まった。
その男性の髪の色に一瞬戸惑ってしまったというのもあるが、一番の理由は他にあった。
遠野は恐いもの知らずというわけではないが、度胸はある方だと思っていた。
現に幽霊などには物応じせず、サークル内でも何かとあれば頼られる兄貴分的存在であった。
しかし本当に一瞬。強がりをいうわけではないが本当に一瞬だけ萎縮したのである。
その男の白銀の髪。そしてその前髪の隙間から遠野を見つめる…、いや…、睨みつけるようなその鋭い眼光に…。
その男はすぐに視線を外し、応接用のテーブルの奥にある机に向かった。
そしてゆっくりと席に座り、肘をつき手を組む。
そしてもう一度遠野を見て、質問をした。
「お前が今回の依頼人か?」
「えぇ。初めまして。遠…」
まだ多少緊張していたが、何とか答えようとした時だった。
奥から先ほど案内をしてくれた斎藤が姿を現し、遠野の言葉を遮る。
「ちょっ…キョウさん!またそんな威圧的に!ダメですって!」
そう言いながら申し訳なさそうに遠野の向かいのソファーに座る。
「すみません。悪い人ではないので。改めて自己紹介しますね。こちらが雲雀恭介。ここの事務所の所長です」
「そして自分は斎藤和也。助手をやってます。そして…ってもう知ってますよね?安藤奈津さん。ここでバイトをしてもらっています」
丁寧に自己紹介をする斎藤。
「どうもありがとうございます。今回相談させていただく遠野慎太郎と申します」
遠野は軽く会釈をした。
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