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「相談というのが…。人探しでして…」
遠野は何やらバツの悪そうに言った。
そして少しためらって続ける。
「簡単に言えば肝試しに行って行方不明になった百合と長谷川を探してほしいんです…。あっ、百合は俺の彼女です。長谷川は長谷川沙織と言ってサークルのメンバーです…」
「ちなみに行方不明者届は出したのか?」
雲雀が問いかける。
「えぇ。二人の親御さんも心配していて…。一応出したのですが、警察も本格的に捜索はしないって聞きますし…。もちろん自分たちも懸命に捜索しました。でも何も情報を得られなくて…」
「それに…こんな話…。信じてもらえるかどうかわからなくて警察にも言うのをやめたんです…。俺自身も混乱してしまって…」
「何か訳ありみたいですね?」
「えぇ。行方不明になる直前の行動というか…。おかしかったんです…。なんて言うか…。百合だけど百合じゃないというか…。バカげてますよね?こんな話。でも本当にあれは百合じゃなかったんです!」
「わかった。落ち着け。時間はたっぷりある。洗いざらい全部話せ。いいな?」
「キョウさん…。警察の取り調べになってますから。遠野さんでしたよね?心配いりません。ここではどんな変な話もちゃんと聞きますので、落ち着いて順番に話してください」
ここに来るまで心霊探偵事務所なんて詐欺まがいのインチキ事務所だと思っていた遠野であったが、雲雀たちの真剣な空気にのまれ不思議と口が軽くなった。
「わかりました。お話します…」
遠野は前かがみになり神妙な顔つきで話し始めた…。
「10月中旬の出来事でした…」
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