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その日の夜の空模様は、まるで児島敦也の心情を映し出すかのように荒れ狂っていた。
建設会社に勤める児島は土砂降りの中、車を走らせる。
激しい雨音が車内に響き渡り、風はしばしば車体を揺さぶる。暗闇がどんどん彼を飲み込んでいく中、不吉な予感が心を掠める。
仕事の急なトラブルの為、残業が長引き気が付けば夜中の0時を回っていた。
「こんな田舎なんて来なきゃよかった…」
児島は運転しながらふと呟く。
現場監督のため、都会から地方へ異動してきた児島。
もうすぐ40歳になる児島にとって、上の職への昇格の為には仕方のないことだった。
数ある候補地の中から選んだのはここ東北地方のとある地域。
近年過疎化が進み、地域興しのため一大テーマパークを建設しようと目論見を立てていた。
そこでまずは交通の整備ということで、とあるトンネルの工事現場を任されたのが半年前。
そして彼の記憶の片隅に、あの日の恐ろしい出来事が蘇る。
「ったく…。あんなことが起きてからろくなことがねぇや…。さっさと帰って酒飲んで寝るか…。そういや…」
ぶつぶつと愚痴を呟きながら暗い山の中を車のライトを頼りにひたすら進む。
一応舗装はされているが、街灯などは一切なく。真っ暗な道が…いやその先に道があるのかすらわからない。
唯一見えるのが車のライトに照らされた数メートル先までの道。
視界はというと、この土砂降りでさらに悪くなっていた。
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