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秋も深まり、もうすぐ冬の知らせが来ようとしていた11月の上旬の事である。
日が傾くのが早くなり午後5時を回ったころには夕焼けが顔を出す。
そんな中、遠野慎太郎は古い雑居ビルの前に立っていた。
「ここ…だよな…?」
スマホを取り出し地図アプリで場所を確認する。
赤いピンと現在位置がぴったり重なっていた。
遠野は雑居ビルを見上げる。
ボロボロの看板の中にひと際目を引く新しい文字で書かれた看板があった。
『雲雀心霊探偵事務所』
「やっぱりここだ…」
遠野は大きくため息をついた。
(来なきゃよかった…)
その言葉が頭の中をぐるぐると駆け回る。
幽霊?お化け?妖怪?
遠野はそういった類のものは信じてなかった。
(馬鹿馬鹿しい…)
そう思っていたからこそあの肝試しにも参加したのだった。
「心霊探偵事務所って…」
今現在もこの場所に立っている自分が馬鹿馬鹿しく思えてくる。
しかしながら白井百合の件がある。
今は藁にも縋る想いなのだ。
遠野は意を決し、遠野は雑居ビルへと足を踏み入れた。
エレベーターの横の案内板には『3F 雲雀心霊探偵事務所』と書かれてあった。
(3階…)
エレベーターのボタンを押す。
3階に上がると薄暗い廊下が遠野を出迎えた。
(いかにもって感じだな…)
そんなことを思いながら遠野は歩みを進める。
やがて『雲雀心霊探偵事務所』と書かれたプレートが貼ってあるドアを見つけた。
遠野はドアの前で大きく深呼吸をする。
そしてドアを3回ノックし、恐る恐るドアを開けた。
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