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遠野がドアをノックする少し前の事だった。
「ちょっとカズさん!またコーヒーカップそのままにして!ちゃんと流しに片付けて下さいって言いましたよね!?」
「いっ…いや…。またすぐ飲もうかなと思いまして…」
奈津とばつの悪そうな斎藤の声が聞こえた。
「来て早々騒がしいな」
せっせと片す奈津に向かい自分の机に座っている雲雀がぽつりと言う。
「今日は私の知り合いが相談に来るんです!ほらテーブルの上片づけちゃわないと…」
「りょーかいしました…」
二人は応接用のテーブルの上を片し始める。
「雲雀さん!またコート脱ぎっぱなし!」
「いいじゃねえか。どうせまた着るんだから」
「ダメです!しわになったらどうするんですか!?何でもう男の人って…」
「ったく…もうすっかり馴染みやがって…」
「???何ですか?雲雀さん?」
雲雀のボソッと呟いた言葉にすこし怒った反応をするが、どこか嬉しそうな奈津。
「まぁまぁ…。奈っちゃんが来てくれるようになって事務所内はいつもキレイだし、細かい所にも目が届くようになって凄く助かってるよ」
「まぁ否定はしない」
安藤奈津がこの雲雀心霊探偵事務所で働き始めてもうすぐ4ヶ月になる。
大学との折り合いがあるため、毎日とはいかないが時間がある日は顔を出す様にしていた。
この日は講義が午後から1コマだけだったので、午後3時過ぎにはこの事務所に顔を出していた。
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