「招かざる真実」

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  午後7時。隆太が家を出てからもう半日が経つ。さすがに遅すぎる。いくら家出したとはいえ隆太はまだ小学生だ。普通なら怖くなって家に戻ってくるはず。途中で事故に遭ったか、もしくは誘拐されたか……色々考えているうちに、俺は隆太を捜すことにした。行方不明届を出そうとも考えたのだが、恐らく警察も事件性がないと判断してまともに取り合ってくれないだろう。 恐らく隆太はそう遠くへは行っていないはず。隆太は方向音痴で道を覚えるのが苦手だ。同じ場所にしか行かないだろう。これらを踏まえて一番考えられるのが、隆太がよく気に入って何度も遊びに行っていた公園だ。家から歩いて10分もしない。俺は急いでそこを目指した。 もうすぐ公園が見えてくるであろう駐車場まで着いた頃。俺は隆太の名前をひたすら呼び続け、公園まで向かったのだが、俺は何やら公園の前で人が集まっているのを見つけた。俺は嫌な予感を感じ、すぐにその公園に向かおうとしたその時、 「お前、来てたのか。」 俺は驚いて後ろを振り向いた。その声の主は親父だった。 龍助「親父……なんでここに……」 親父「お前こそなんでここにいる。そんなに焦って何しに来たんだ。探し物か?」 龍助「いや、俺は今……」 親父「隆太を捜してるんだろ?」 龍助「……え?」 俺は言葉が見つからなかった。なんで親父が俺が隆太を捜していることを知っているのか……しかも親父は何か様子がおかしかった。何か壮絶なものを見てしまったかのような、そんな表情をしていた。 龍助「親父なんでその事を……。一体何があったんだよ親父!!」 親父「隆太が死んだ」 唐突に告げられた一言。俺はこの時一瞬時間の流れが止まったような気がした。それと同時に、今まで隆太と過ごしてきた思い出が走馬灯のように頭の中を流れていった。 ……隆太は自殺したのだ。 その瞬間俺はようやく隆太の気持ちが分かったような気がした。 俺のせいだ……俺のせいで隆太は死んだんだ……。 親父「俺はお前と違って隆太と遊んでやることが出来なかった。だから俺はお前を信じて隆太の成長を遠くから見守ってやった……なのに……」 その瞬間、 「隆太が死んだのも、全部お前のせいだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 親父は突然狂ったかのように泣き叫びながら俺の肩に掴みかかって俺を投げ飛ばした。 そしてその場で膝から崩れ落ち、大粒の涙を流し続けながら泣き叫んでいた。 それ以来、俺はもう親父に会うことはなかった。 家族からも縁を切られ、孤独と絶望に塗れた俺は、毎日酒に溺れて泣き叫ぶ毎日を過ごしていた。外に出ても周りからはただ白い目で見つめられ、蔑まれるだけだった。俺は薄らと頭の中で「自殺」の二文字が浮かんでいた。 俺は車が多く行き交う交差点を見つけ、あえて車の信号が青に変わるタイミングを見計らい横断歩道に身を乗り出した。 俺は無事轢かれることに成功した。
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