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交渉
「ダメだ……まだ死んじゃダメだ!! あなたにはまだチャンスはある……!!」
気づけば俺は病室にいた。俺の隣には看護師が立っていて、こう告げられた。
看護師「目が覚めましたか。本当に幸いでしたね。あと少しでも救助が遅れていたらもう助からなかったでしょう。」
俺は助かったんだ……死ぬことが出来なかったんだ……。死んだら楽になれると思ったのに……
俺は無性に涙がこぼれてきた。しかもそれは助かって良かった、なんて理由じゃなかった。またあの屈辱感と絶望に怯えながら生きていかないといけないのか。いっそ死んだほうが楽だった……そんな気さえしていた。
看護師「落ち着いて聞いてください。今あなたの体は非常に危険な状態にあります。恐らくこのままだと、全治4ヶ月は余儀なくされるでしょう。」
龍助「俺は今、どういう状態なんですか。」
看護師「頭を強く打ったことによる脳震盪と、右手首骨折、右足複雑骨折などが見られます。しばらくは安静にした方が良いでしょう。」
この時俺は少し気になっていたことがあったので、俺はどうにか説得して屋上に行かせてもらうことにした。あのような状況の中なぜ俺は助かったのか。そして誰が俺を助けたのか。色々考えているうちに、俺はますます悲しくなってきた。するとその時、
「目が覚めたんですね。」
どこかで聞き覚えのある声……そうだ。俺がまだ警察官だった頃、俺の後輩だった木村真二郎だ。
真二郎「ご無沙汰してます。田村さん、いや、田村元警部補」
龍助「お前が俺を助けたのか」
真二郎「ええ。とっさの判断で救急車を呼んだんです。あと少しでも遅ければあなたはもう助からなかったと聞きました。」
龍助「なぜ俺なんかを助けた」
そうだ。俺は死にたかったんだ。もうこれ以上あんな思いをしたくない。俺は助けられたことに、なぜか少し怒りを感じていた。
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