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激しい衝撃と同時に大夢の身体は宙に放り出された。ろくに受け身も取れず硬い地面へ叩きつけられ、ウッと情けない声が漏れる。
痛みに悶えつつ目を開けると、まず、さっきまで乗っていたタイムマシンが見えた。楕円形のボディは下部が無惨に潰れ、ちょうどコロンブスの卵みたくなっている。もしくは、白煙をもくもくと吐き出す様は剥きたての茹で卵にも似ているかもしれない。
そのまま、視線を卵の周囲へと移す。
「なんだこれは」
率直に湧いた疑問だった。
見渡す限り瓦礫の山。かつて何かの建造物だったであろうそれらが地表を覆うほど散らばる一方、今建っている建物は一つも見当たらない。言うなればまるで、爆弾でも落とされた後のような光景。
「なんだこれは」もう一度零れた。
到着予定は10年後のはず。事故の影響で時間軸がズレたのか。
それともまさか、ここが10年後の東京だというのか。
エンジン音がして、大夢の知っている小型車よりさらに一回り小さいヘンテコな車がやって来た。
車は大夢の前でゆっくりと停車し、運転席から小柄で痩せこけた男が降りてくる。男は、大夢の頭に躊躇なく銃を向けた。
「時空の歪みを観測した。別の時代からの来訪者と見受けるが、何者だ」
「あ、怪しい者じゃない。タイムマシンの実用化試験中、時空難事故に遭ったんだ。予定では10年後の、2060年に着く予定だったんだが」
「何だと!」
男はなぜか喜色をあらわにした。
「今は西暦2250年。お前の時代から見て200年後の日本だ」
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