37人が本棚に入れています
本棚に追加
「原因不明の超常現象と歴史上類を見ない戦争が、同時期に起こっているんだ。関係ないと考える方が難しい」
そうだろうか、と大夢は思った。言葉一つ失くなったぐらいで戦争が起こるなんて、そんなことがあるのだろうか。
少なくとも大夢には想像できない。
「俺は戦争を止めるため、長年その言葉の正体を探っている。だから言化け以前の時代から来たお前には、研究に協力してもらう」
命令的な口調は少し気に障る。が、困っているところを拾ってもらったわけだし、元よりそれぐらいはするつもりだった。
どのみちタイムマシンが壊れている以上すぐには帰れない。
あれ、と大夢は気付いた。
「タイムマシンで過去に行けば、その言葉がわかるんじゃないのか? こっちにもあるだろ? 俺の時代ですでに実用化実験中なんだし」
「もちろん試したさ。だが言化け以前と以後で時空が断絶していて、言化け以前まで遡ることが出来ないんだ。だから、お前がここに来たことは奇跡のような幸運だな」
中川の口角がニッと吊り上がる。なるほど。さっき、大夢が来た時代を知った時に喜んだ理由はこれか。
そしてその話は大夢にとっての朗報でもあった。
「帰れるかはともかく、とりあえず、マシンの修理はできそうだな。良かった。研究には協力するから、後でマシンの部品調達を手伝ってくれないか?」
それは軽い気持ちでしたお願いだったが、当然承諾してもらえるものと思っていた。
中川はキョトン、と音がしそうなほど目をまんまるに見開く。
「なぜ? お前のマシンを直すことで、俺に何か得があるのか?」
最初のコメントを投稿しよう!