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蜃気楼
‥‥‥砂漠の中のオアシス。
今迄の間、家族同然の様に一緒に暮らして来た施設の仲間を震災に因る被害で一度に無くした修二・拓磨・未季の3人にとって、それでも復興支援を夢見て救助活動を続けるボランティア・クルーの人間が集う場所が、最早憩いの場所となろうとしていた。
‥‥‥正に、砂漠の中のオアシス。
何故、あの時、修二達は、ボランティア・クルーの中のひとりの青年の申し出を頑なに無視して、遠ざかって行ってしまったのか?
それは、ボランティア活動の中で生きる青年が見せる笑顔が、わざとらしくもあり又、煩わしさを感じさせてしまったのかも知れないけれど、それでも誰かの笑顔と関わっていたいと言う、修二達の心の揺らぎが、ボランティア・クルーが炊き出しをしているであろう場所へと、足取りの歩を進める結果となってしまったのかも知らない。
‥‥‥ところが。
修二達が、その場所へと辿り着いた頃。今迄の間、あちこちで作業をしていたボランティア・クルーの人間の姿は影ひとつ無く、既に消えてしまっており、そこら中で彷徨っているのは皆、住まいを失ってしまった浮浪者の様な人間の姿とカラスや鳩の群ればかり。
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