蜃気楼

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「‥‥‥どうせ、所詮は人間なんて動物は、他人を裏切る奴らしかいないんだ。」 如何にも訝しげな表情を見せながら、修二は暗然とした口調で呟いて見せた。拓磨と未季は、修二を慰めるかの様に話す。 「そんな風に思うのはよしましょ。」 「‥‥‥そうだよ、修ちゃん。」 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」 暫しの間、俯き、口を閉ざしたままの修二だったのだが、唐突に、不敵な笑みを浮かべながら、彼は、何かを思い出したかの様に懐から一枚のキャッシュカードを取り出して、拓磨と未季の目前に差し出すのであった。 「‥‥‥実は、こんな優れ物をこっそり頂いてたのを、すっかり忘れてたよ!」 そのキャッシュカードは、修二達が、ひっそりと忍び込んで、暫しの間暮らしていた民家の書斎の間で、修二がこっそりとポケットの中に忍ばせていたモノであった。 「ダメだよ、修ちゃん!人ん家のモノを勝手に持ち出しちゃ、泥棒さんだよ?さっき、那由蛇さんと約束したばかりじゃないか。」 拓磨にそう言われて、思わず、訝しげな表情でキャッシュカードを見つめている修二。唐突に、未季が、所構わずに呟いた。 「でも、そんな事より、暗証番号とかって分かってるのかしら?」 その時、修二は、未季の真顔を一瞥し、拓磨と顔を見合わせながら深い溜息を吐いた。
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