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「‥‥‥ヤッパリ、そのカード、あのお家へ返しに行こう?」
拓磨にそれと無く諌められ、修二は、その一枚のキャッシュカードを右手に握り締めながら、元来た道を引き返そうとしていた。その後を連れ立って歩く、拓磨と未季。
その時の事であった‥‥‥。
瓦礫に埋もれた街並みで、無精髭を生やした初老の男がひとり、何やら漁っている姿が見える。薄汚れた白いワイシャツに灰色がかったチノパン、泥塗れの赤いスニーカー姿のその男は一体、何者なのであろうか?
その男の姿を見るや否や、修二は、それと無く小声で拓磨と未季に言った。
「‥‥‥俺達、何も見なかった事にしよう。あんなの相手にする暇なんて無いし。早く急がなきゃならないんだしさぁ。」
ところが、何を思ったのか、その男は、まるで修二達の行く手を阻むかの様に、傍へと近付いて話し掛けて来るのであった。
「‥‥‥オイッ、小僧ども。お前達は、こんな所をうろついて何をしてる?」
その時、未季が、恐る恐る男に話した。
「‥‥‥オジちゃんこそ、こんな場所で何してるの?」
「余計な事を‥‥‥。」
思わず、舌打ちをし、さり気無く小声で呟いてしまう修二。それを見守る拓磨。
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