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「‥‥‥オイラは、荒れてしまった土地を耕そうとしているだけだ!」
‥‥‥男は、その時、確かにそう呟いた。拓磨も又、その男に話し掛けた。
「でも、オジさん。ひとり切りでそんな事出来るの?‥‥‥難しそうだよ。」
男は、ボソリと呟いた。
「オイラは、オジさんなんかじゃねぇ。親から貰った、岡安彦左衛門って言う立派な名前があるじゃけに。」
そう言うと、彦左衛門と名乗るその男は、懐に忍ばせてあったトックリの酒を浴びる様に呑みながら、鍬を手に取って、再び瓦礫の山積みとなってしまった土地を耕し始めるのであった。‥‥‥まるでゾンビの様に徘徊している町の住人を相手にもせず、只管、荒れた土地を耕しながらも、彦左衛門は愚痴を溢し始めていた。
「‥‥‥どうして、オイラばかりがこんな事しなけりゃなんねぇ〜んだぁ!」
彦左衛門を尻目に、修二は、ヒラリと小声で呟いた。
「だったら、ひとり切りでそんな事しなけりゃ良いのに。」
まるで、修二の声が聞こえていたかの様に、彦左衛門は答えた。
「だって、仕様がなかろう。オイラが何もしなけりゃ、誰も何もしねえんだからよ!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥。。。」
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