あの頃の僕ら

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すると、修二は、ぼんやりと部屋の窓の向こう側に見える空に浮かんでいる雲を見詰めながら、ゆるりと呟いた。 「‥‥‥だったら、この俺も、心が躍る様な冒険でもして見たいナァ!」 その時、拓磨が、修二に言った。 「‥‥‥何を言ってるんだよ。僕達は、既に冒険してるじゃない。物語の世界観を誰かが描いたみたいに、僕達が暮らすこの世界だって、遠い昔に誰かに作られた筈だし、君や僕たち皆も、物語に出て来る登場人物みたいなモノだと思う。‥‥‥それに、‥‥‥冒険って言うモノは、何時も退屈な毎日の中から生まれて来るみたいだしネ?‥‥‥今と言う名の日常も、これから何かが起こる序章みたいなモノかも知れないよ!」 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。。。 今となっては、家族みたいに仲良く暮らしている修二と拓磨。‥‥そして、未季。イヤ、施設で暮らしている児童達や職員のひとりひとりが皆、修二にとっては家族の様な存在だったのかも知れない。 毎日、皆で賑やかにテーブルを囲んで過ごす食事の時間。 一緒にショッピングに出掛ける事もあった。 一緒にハイキングに出掛ける事もあった。 少しばかりの喧嘩や諍いがあったとしても、皆と一緒に暮らしている中で、家族のいない寂しさも少しは和らいで行った。 ‥‥‥‥‥‥そう。 或る年の3月11日。修二にとって、忘れる事の出来ない厄災。 ‥‥‥‥‥‥東日本大震災。 修二の暮らしている施設がある町を東日本大震災が襲ったのは、その矢先での出来事だったのである。。。
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