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新幹線から在来線へと乗り継ぎ、岩手県にある寂れた名も無い駅に母親に連れられて来ていた拓磨。
駅の構内に差し掛かった辺りで、母親の由香里が、拓磨に言った。
「‥‥‥ねぇ、タッ君。‥‥‥ママ、トイレに行って来るから、此処で少し待っててくれるかしら?‥‥‥タッ君は、トイレは大丈夫かしら?」
「‥‥‥うん、大丈夫だよ。」
そして、由香里は、拓磨の傍らから離れて行くのだった。拓磨は、母の言葉を信じて、その場所で待ち続けた‥‥‥。
‥‥‥1時間が過ぎた。
しかし、母親である由香里が戻って来る気配は感じられなかった。それでも、拓磨は、待ち続けた。
更に、1時間が過ぎた‥‥‥。
その時、拓磨は、僅かながらに不安を感じ始めていた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。。。
西の空の彼方が暁色に染まり、夕焼け空が見え始めた。遠くの空では、一羽のカラスが山里へと帰っている姿が見える。
拓磨は、遂に、不安感に押し潰されそうになってしまい、シクシクと泣き始めた。丁度、其処へ通り掛かったひとりの駅員が拓磨の姿を見るに見兼ねて、優しく懇切丁寧に声を掛けた。
「‥‥‥坊や、君、ひとりかい?‥‥‥こんな場所で、何がどうしたの?‥‥‥パパやママは一緒じゃ無いの?」
拓磨は、大声で泣きじゃくりながら、只々呟くばかりで‥‥‥。
「‥‥‥ママが、‥‥ママがぁぁぁ!」
その駅員は、警察関係者に連絡をし、警察を通して、拓磨は、警察官に付き添われて、若葉の里児童園を訪れたのである。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。。。
何時の頃からか、修二と拓磨の傍らで行動を共にする様になっていた未季。彼女は、とても不思議な境遇の少女であった。
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