運命の行方

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幼少の頃、ふと気が付くと、未季は、山肌にある道を独りぼっちで歩き続けていた。裸足のままで、今迄に自分が何処で何をしていたのか、何処からやって来たのか、それ迄の記憶を持つ事も無く、彼女は、只管に歩き続けていた。 未季は、何処と無く、風変わりな衣装でその身を包まれていた。どうやら、何処かの国の民族衣装の様にも感じられる。 山道を歩き続けていた未季は、やがて、人家が見え隠れする町並みへと辿り着いた。ところが、若葉の里児童園の敷地へと差し掛かった瞬間、彼女は、精も根も尽きてしまい、倒れ込むかの様にその場に踞ってしまう。やがて、施設の職員が彼女の姿に気付き、未季は、施設へと連れられて行き、其処で介抱される事となるに至った訳である。 施設を訪れた頃の未季は、誰に対しても口を開く事は無かった。施設の職員が、色々と話し掛けようとしたのだけれど、それでも、 「‥‥‥‥‥‥ミキ。」 ‥‥‥とだけ呟く有り様で、俯き、口を閉ざしているばかりであった。施設の園長である榎本枝美子は、その様な彼女を不憫に思い、未季を自分の養女とする事を思い立つ。それ以来、未季は、榎本の姓を名乗る事となった訳である。やがて、未季が施設を訪れてから10日余りが過ぎた頃、彼女は、ようやく口を開く様になり、感情表現は乏しいものの、それでも、彼女が僅かながらにも笑みを溢すと、周囲にいる者達を幸せな気持ちにさせる程に、少しずつ未季の気持ちも和らいで行くのだった。彼女も、読書に興味があるらしく、何時の頃からか、修二や拓磨と親しく話をする様になっていた。 或る年の冬。その日は丁度、クリスマス・イヴの日。その日の昼下がり、修二と拓磨と未季の3人は、他の児童と一緒に、施設の職員に連れられて、その日の夜に開かれるパーティーの準備の為に最寄りのデパートまでショッピングに出掛けていた。 デパートの外観も内装も、クリスマス仕様に模様替えをされ、煌びやかな装飾で彩られていた。家族連れの子供達は皆、大はしゃぎで行き交う人の波。 その様な子供の姿を見つめながら、修二は、ボソリと呟いて見せた。 「‥‥‥世の中の子供達は皆、気楽で良いもんだよナァ。俺達が、どんな想いで暮らしているかも知りもしないでさぁ〜。。。」
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