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十歳の誕生日に森へと捨てられた。
僕が三歳くらいの頃、溺愛されていた兄様に魔法で怪我を負わせてしまったときから、両親には疎まれ嫌われていたんだ。
僕の生きているこの世界には、魔法が存在する。そして、人と魔族という大まかな種族が暮らしており、人は基本的に魔法を扱うことが出来ない。魔族は誰もが簡単な魔法を扱うことが出来るらしい。稀に強力な魔法を扱える人間が現れることもある。そういった人は国から保護され、特別な機関で魔法の使い方を学ぶ。
そして、魔法使いの中から、数百年に一度、勇者が現れるんだ。勇者は魔族の王を倒す役割を与えられ、仲間を引連れて旅に出る。人間と魔族はそうやって、何千年も前から争いを続けているそうだ。
でも、僕が魔法を使えることを両親が国に知らせることはなかった。コントロールの効かなくなった魔法が兄様に当たり、なんとか一命は取り留めたものの、兄様の足は少し不自由になってしまったからだ。魔法を憎み、僕をそれ以上に憎んでいる両親は、僕が幸せになることを許さなかった。
そこそこ裕福な子爵家の次男として産まれたけれど、その一件以来子使用人のように扱われるようになった。使用人がこっそりと残してくれていたまかないや、残飯で毎日を食いつなぐ日々。広い屋敷内を一人で掃除しろと命じられ、服も一着しか与えられなかった。
兄様は、何度も助けようとしてくれた。けれど、両親に言い含められて僕に近づくことすらできなくなったんだ。元々、身体の弱かった兄様は、僕の十歳の誕生日前日に病で亡くなり、両親にはお前のせいだと散々罵られて、次の日に森へと置き去りにされた。
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