許可制

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公務員、医療、福祉、電気や水道など。生活に必要なものはなぜか機能していた。機能していたが以前と違っていた。 医者と名乗る者がうちへ来るのだ。 看護師を引き連れてこちらにやってくる。 そして皆態度が悪い。らしい。 聞くだけなら、最初はそんなシステムになって疲れてるんだろうと思っていたが。ある日持病のせいで医者が部屋に来たことがあった。 彼、彼女らの眼はとても厳しかったのだ。口調も高圧的であり。端的に一言二言で命令する。 世間話もなく、必要な説明だけしてそそくさと帰っていく。 もう来ないでくれと思った。 そうそう、変わったのはもう一つ。 この日以来、月一で段ボールが届くようになった。 送り先は国からだった。 白くて四角い固形のブロックがたくさん入っている。 完全栄養食らしいそれは食べてたらざらりと歯ですりつぶせるほど粉っぽく、甘じょっぱかった。 最初の頃は冷蔵庫の残り物で何とかしのいで部屋の隅に置いていたレーションもどきも次第に手を付けざるおえなくなってきた。 そんなとき、一人の動画配信者がレーションレシピを投稿。それがバズり、多くのレシピがネットに出回ることに。   私もスイーツが比較的やりやすく、面白そうだったのでやってみたが、さほどうまいものでもなかった。 しかし、その動画も調味料が各家庭から無くなってくると流行らなくなった。その頃だろう。娯楽も底が見え始めた。新しいことがなくなり。古いものを遡る様になんとか楽しみを見出すことしかできない。 ネットの動きも遅い。 サブスクはサーバーが落ちたままそれすら楽しめなくなった。 最初に限界が来たのは若者で、次にお年寄りだった。 みんな絶望して部屋をでて、外へ出ると両手を広げ、空を、緑を眺め、希望に満ち溢れた顔をしてまた部屋に戻っていくのだ。 どうやって調べたのか、過去一番の失踪率らしかった。今も彼、彼女たちは戻ってきていない。 そんな憂鬱な日々に、一人の勇者が現れる。 自殺配信と銘打って生配信していた若者だった。 『ワタクシ! ○○は今からコンビニへ向かいます。許可お願いします!』 カメラの前で天高く右腕を上げてそう高々に宣言し、気がふれたようにテンションが高く、勢いよく玄関から出るとそのまま近くのコンビニまで走って窓ガラスを割って侵入。ビールと賞味期限が切れたおにぎりを盗んで部屋へと戻る配信だった。 その動画は炎上していた。そのせいで遲い回線がさらに遅くなって一時SNSが使えなくなった。 誰もが、こいつ死んだな。と嘲笑していた。 しかし、彼は死ななかった。 それから三年後、彼は再びネットに戻ってきた。 窃盗で逮捕されていたらしい。自分でも生きていることが不思議で原因が分かっていないとのことだった。 しかし、最後にぼそりと呟いたある一言が、奇跡をつくった。 『いや~、ほんとなんでなんすかね。やっぱ先に許可取ったからかな』 若者を真似た最初の一人はうつ病の女性だった。 彼女が後にSNSに彼の動画のURL引用してこうつぶやいた。 『この人がやってた通りに出かける前に許可取って外出てみたけど、ちょうど今日が一カ月。全然大丈夫でw』 そこからみんな早かった。 『はい! ワタクシ○○は散歩がしたいので外出許可お願いします!』 『実家に帰りたいので!』 『友達に会いたいので!』 『レーション以外の物が食べたいので!』※お腹が空いたのではレーションがあるので許可がおりないというほんとかデマか分からない情報が増えた。 許可制にしたとたん。 生活が元にもどっていったのだ。 ただ一つ、違うのは。相変わらず医者や警察は高圧的なのは元に戻らなかった。 終わり
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