許可制

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許可制

会社の指示が出るまで自宅待機してください。 学校の指示が出るまで自宅待機してください。 その文だけ読めばそれがその人の携帯からだと誰しも思うだろう。 だがこれはメールでも社長や校長の指示でもない 不要不急の外出は控えてください。 テレビ画面に表示されたその文字は突如として我が家に放送された。 不要不急の外出は控えてください。 先程まで私はレンジで温めた昨日の残りのカレーを呑気にあちあちと笑いながらテーブルに持ってきては、コップになみなみ水を注いで氷が馴染む前に半分飲み干しながらチャンネルをコント大会に合わせて絶賛待機モードだったのだ。 いざ大会が始まり、デカデカとタイトルロゴが現れいざ尋常に勝負! その瞬間、画面は青一色になった。青い画面には先程の文字が白抜きされ、不快なピー音を流している。 チャンネルを変えてもどこも同じ画面だった。 不快と不安でどっと心臓が重くなった気がした。 慌ててそばで準備していた携帯を開く。SNSはその話題でもちきりだ。 呟きの中で数人ほど、外へ出た数分に満たない動画や写真を投稿しているものがいた。 それに続いて皆普段通りに外へとでて何もなかったと報告していた。 その映像は特に変わった様子もなく、近所らしい街灯やゴミ箱、民家が映っているだけ。 ただ一つ、そこに車や人影はないのだ。 私は片手で携帯をもってカーテンを開けた。 先程の画面がテレビに表示されて数分ほどしか立っていない。 なのに、早すぎる。 まだ仕事帰りの車がいてもいいはずだ。いや、時間なんて関係ない真夜中でもないし、交通がなくなるなんてことあるのか…。 私は気味が悪くて外を出て確認するのが怖くなった。 あ、と声が漏れる。 動画と同じように隣の住人が玄関から顔を出したのだ。 恐る恐る顔を出し、何も起こらないとわかると廊下へと出て柵からあたりを見渡していた。 私も出ようと思ったが、すぐ玄関から引き返した。 今思えば、防衛本能というか、本能が開けるな!と玄関のドアノブに近づくにつれて鼓動が早まって気持ち悪くなったのだ。嫌な予感がして、それは見事に的中した。 あの日から、SNSで動画や写真を投稿していたアカウントがすべて、一ヶ月以上更新がとまり、皆行方知れずになっている。 あの日、何事もなく部屋に戻っていった隣人も、 今日、警察が部屋へ入っていくのを窓から確認できた。
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