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「……アルフレッド様、近いですよ」
君の隠れる場所がいつも狭いんだよ、と肩を寄せて主人公級の笑顔を遺憾なく発揮するのが我が国の第二王子である。ちなみに我が国には現在第五まで王子がいる。まだ増えそうな気がしなくもない。
第一王子と同い年で、今は亡き前王妃様の御子であるアルフレッド様とは幼馴染でもなんでもないところが私の名脇役である証拠なのかもしれない。
幼いころから親交があって……とか、昔何かの縁で知り合って学園で再会して……だとかは全くない。さすが脇役。フラグがない。
殿下との出会いは、今日のようにマデリン様の主人公にふさわしいご活躍を影ながら見守っていたら、面白がってついてくるようになったのだ。一文で説明出来るエピソードである。
「いつになったらアルって呼んでくれるのかな」
クスクスと低く笑うから触れてる肩から振動が伝わってくる。
私の胸が跳ねたのは、それにつられただけだ。
アルフレッド様のような主役級の人物がこんな意味深なことを呟いたからといって、突然ムーディーな音楽が聞こえてくるだとか、突然風が吹いていい感じな雰囲気になるとかは無い。
「なんてね」
ほらね。殿下は肩をすくめて何もなかったかのように修羅場の観劇に視線をやった。殿下は物語で言うところの、主人公に想いを寄せるとかそういう系の役どころなのだから。
たぶん、私は殿下がいかに女子生徒に人気があるか見せるための賑やかし脇役だ。
ふぅ、と溜息をついて私も視線を修羅場へと戻す。
「……今だけですよ。アル様」
ぼそりと呟くと、一拍遅れてアルフレッド殿下が私の手をぐわしっと掴んだ。えっ、と視線を戻せば瞳孔が完全に開いたアル様がこちらを見ていた。怖すぎる。
ちょちょちょちょっと王族に対して気安すぎただろうか!?脇役風情がすみません家族だけは無関係なんですうううう!!!
「……ナタリア、もう一度呼んで」
ナタリアは私の名前である。ここまで名前を紹介されないでも物語は進んでいる。さすが脇役。
「アッハイ、……ア……アッ、ァルサマ……」
「ナタリア……嬉しいよ。やっと、やっとなんだね……」
嬉しいよと言いながら、アル様の瞳孔は深淵を覗き込んでいるかのように底が見えない。ドウシテ
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