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「ナタリア……?……ヒューズ公爵の娘だと!?海外にいるのではなかったか!!?」
「……いま──「アルフレッド!貴様、ヒューズ公爵の掌中の珠を手に入れ、王座を狙っているのではあるまいな!!」
いました、と答えようとしたのに遮られてしまった。脇役のつらいところだ。
ややしょんぼりとしているとアルがグイッと抱き寄せた。
「勘違いさせるようなことを言うな。俺は玉座なんて興味がない。ナタリアが結婚を受け入れてくれたところなんだから水を差すな」
「受け入れ、ました……?」
いやいやいやいや。待ってほしい。この一幕の中に求婚され、受け入れる描写なんてあっただろうか?いや、ない。
しかも、先ほどしょぼんとしたのは王座を得るための駒扱いだったのね!ということでは無く、脇役だということを再確認したからである。
私の小さな呟きはちゃんと聞こえていたのか、アル様がまたあの瞳孔が完全に開いた目でぐわっと顔を近づけてきた。だから怖すぎますって!!
「受け入れてくれたよね?アルって呼んでくれたよね?」
「アッ、ハイ、ヨビマシタ、ハイ」
これってあれだろうか、愛称で呼ぶと何かを受け入れたことになるんだろうか?学園入学前まで海外にいたせいでこの国の風習に疎いところがあるんだが、それだろうか????
「俺と結婚するんだよね?」
「エッ」
やっぱりそうなんですね?!私、知らないうちに承諾してましたね!?
そんなつもりはなかったと口を開こうとしたが、アル様の深淵が近づいてくる。飲み込まれそうな深い闇だ。
「……いい子で待っていたらするんだよね。結婚」
闇が、深く
「エッ、アッ、ハイ」
なった気がしたが、私の返事に満足したアル様は「へへっ」と照れたようにポヤポヤした笑顔ではにかんでいる。幻覚を見ていたのだろうか。
「……アルフレッド、ヒューズ公爵から婚約継続はナタリア様の意志を尊重するって取り決めだったのでしょう?」
「マデリン、人聞きの悪いことを言わないでくれ。やっと婚約者と想いが通じ合ったんだから」
「えっ、婚約……?継続……?」
「ヒューズ公爵も人が悪いよね。俺がナタリアを好きすぎるからってナタリアを外国へ留学させるなんて」
「まぁ、アルフレッドにしてはちゃんと”待て”が出来ていたわよね」
「あぁ、”いい子で”待っていただろう。ね、ナタリア」
いい子で待っていたと言い張る大きなワンちゃん、もといアル様は嬉しそうにほほえんだ。
マデリン様は訳知り顔で頷いて、仕方ないわねって顔でちょっと苦笑いだ。
第一王子殿下と男爵令嬢は何か言いたそうにしているが、いいんだろうか。
ほんと、脇役は別軸でやっておきますので、メインストーリーを進めてください……!
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