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Ⅴ.超えてはならない境界線
先生は私の隣で「今帰りか?」と問いかけてくる。
「はい。……先生も?」
「ああ」
まさか先生とこのバスで会うなんて……。これって、運命なの……?
それとも……。
「仕事、大変か?」
そんなことを考えていると、先生は私に話しかけてくる。
「まあ、はい……大変です」
「医者は忙しそうだもんな。 ちゃんと食べてるのか?」
え? 先生、私のこと……。心配してくれてるの?
「……花霞?」
返答のない私に、先生が私の顔をのぞき込んでくる。
「あっ……食べて、ます。ちゃんと」
先生と目が合うだけで、なぜかドキッとする。 なんでだろうか……。
やっぱり、昔好きだった人、だから……?
「自炊してるのか?ちゃんと」
「してますよ?……一応」
料理は結構苦手だけど、やる時はやる。女子力、あんまりないけど。
「そうか。 身体には気をつけろよ?医者だからって油断すると、不健康サインが出るぞ」
先生ってば、私のこと心配しすぎ……?
「心配しなくても大丈夫ですよ。 私は、ちゃんと無理しない程度に留めてますから」
「そうか。ならいいが」
なんか……私、先生といると、自分じゃないみたいにときめく気がする。
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