Ⅴ.超えてはならない境界線

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 この気持ちは……。この気持ちの正体は……。 「そういえば、先生って……」 「ん?」 「先生って……結婚、してましたっけ?」  えっ……? 私、何聞いてるの?!  あれ?おかしい。 こんなこと、聞くつもり全くなかったのに。  なんでこんなこと、聞いちゃったのだろう?! 「結婚? してる訳ないだろ?」 「……え?」  結婚、してない……? てっきり私……先生が結婚してるものだと思ってた。 「結婚してたら、病院搬送された時、普通に嫁一緒に来てるだろ?」 「……た、確かに」  先生は確かに、いつも一人だ。私が会う時、先生はいつも一人だった。  結婚してれば、確かに付き添いがいてもおかしくない。 現に今も、一人だし……。 「結婚したいと思ってた人は、いたんだけどな」 「……え?」  結婚したい人が……いた? 先生に……?  なぜだかその言葉を聞いた時、私の胸がざわざわするのが分かった。 このざわざわした気持ちの正体は、もしかして……。 「……嫉妬?」 「え?」 「いえ、なんでもないです……」  私……もしかして、嫉妬してるの? 先生が結婚していないと知って安心したし、胸がざわざわした。
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