11 アユムへの手紙[後編]完

1/1
前へ
/12ページ
次へ

11 アユムへの手紙[後編]完

アユムへ。  ごめんなさい。またアユムに嘘をついちゃったね。  燃料なんて別に補給しなくてもあたしは大丈夫なんだ。  でもね。嬉しかったよ。エネルギー造るって言ってくれたの。  本当に本当に嬉しかったよ。ありがとう。そして嘘ついてごめん。  アユムがこれを読んでる頃、私はもういなくなってる。  これからあたしは海に飛び込んで自爆することに決めたから。  アユムのお気に入りの場所でごめん。ごめんね。  アユム、怒ってるよね。  嘘ついたんだもんね。当然だよね。  あたし、思ったの。  あたしね。アユムのこと好きだなって。  アユムが好きなこの街が好きだなって。  アユムが昔住んでた家も好きだなって。  アユムのお気に入りのガレキの楽園も好きだなって。  だからね。守りたいって思ったんだ。  あのね。じーさんね。細工したの。こっそりね。  あたしと同じタイプのアンドロイドにね。  あたしが壊れたら他のアンドロイドも壊れるように。  これはね。この国にとって結構な損失になるはずなんだ。  もしかしたら兵器開発の予算とか減らされるかもしれない。  もしかしたら兵器開発の予算がなくなるかもしれない。  そういう可能性に賭けてみたいなって思ったの。  ああ、もう、ページ足りそうにないなぁ。  次の紙読んで、次の紙。  ええと、それで、だから、  だから、あたし、守りたいって思ったから、  自爆することを選ぶことにしたの。  じーさんね。すごく優秀な科学者だった。  だから兵器開発にとても必要な存在だった。  じーさんは守りたかったものを思い出した時、  後悔したんだろうね。  すごく後悔したんだろうね。  今ならじーさんの気持ち分かるんだ。あたし。  だから、分かるんだ。  じーさんがあたしを逃がした後、  どうしたのか。  アユムは怒るだろうね。  じーさんのこと。勝手すぎるって。  でも許してあげて欲しいの。  じーさんは十分、悔やんだ。  それに、あたし、こういう結果になっても、後悔してないよ。  アユムに会えたから。だから、後悔してない。  アユムに出会えて良かったって思うよ。  だから、さっきあたしのエネルギー造るって言ってくれた時みたいに、  あたしと出会ったこと。あたしがアユムに話したこと。  無駄にしないで欲しいの。それがじーさんがあたしを逃がした本当の理由。  あたしのこと忘れないでね。あたしが話したこと忘れないでね。  自分が好きな場所や好きな人のこと忘れないでね。  勝手なことばっか言ってごめん。  そしてもう一つ決めたんだよ。  あたしは天国には行かない。  あたしはずっとここにいるよ。  このガレキの楽園にいる。  だから、さよならは言わない。  また、会おうね。約束だよ。   アユミより。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加