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判決というのは、裁判長が言い渡すものであるが、有罪か無罪かを決めるのは裁判長だけではない。 裁判員も合わせ、証拠を吟味し、意見を交える。たいていの事件であれば、有罪無罪ははっきりと意見が合致するものだが、もし意見が割れれば、最後は多数決で判決を決める。 つまり、裁判長であるからといって、判決を独断で決めてしまえるような権限は有していない。 鹿沼は頭をかき、裁判員たちを見回した後、最後に真里に視線を戻す。 裁判員は一般人から集められていて、法律については素人だが、裁判官である真里はプロである。 そんな真里からの反発は、残念ながら真っ当。 もし逆の立場なら鹿沼も同じことを申し立てていただろう。 つまり、鹿沼がいくら疑念を持ったからといって、皆で長らく議論してきた判決結果を覆すことはできない。 「動画がディープフェイクであることを証明させて欲しい」 鹿沼は言った。
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