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なのに、鹿沼だけが違ってしまった。
鹿沼だけが、あるときから、腑に落ちなくなってしまったのである。
動画を見るたびに、ぞわぞわとした感覚が湧き上がるのだ。
もしかしたら、本物でないかもしれない。
そう考え始めると止まらない。
だいたい、本物でないとすると、事件の顛末も行き着くべき判決も、下手をすれば刑罰も真逆のものなってしまうのだ。
動画の真贋は極めて重要である。
精巧な偽物動画が、罪のない人間に汚名を着せ、罪を犯したものを野放しにしてしまうかもしれない。
鹿沼はそんな考えを抱いてから、夜も深くは眠れない。
何をしていても気になって仕方がない。
突然、そんな風に考えを変えるなんて、おかしいと思われるだろう。
だが、鹿沼には理由があった。
動画が偽造であると考えてしまうキッカケがあった。
十分な理由かどうか問われれば自信がないが、堅実な性格を持つ鹿沼が疑い始めてしまったのは事実だ。
論理的ではないかもしれないが、とにかく、鹿沼の全身に何かがぞわぞわと絡みついてうごめく。
それはふつふつとした怒りも伴っていた。
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