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鹿沼はなかなかその感情の正体が分からなかったが、あるときそれが正義感だと気が付いた。
誤魔化してはいけない。間違いを間違いと言えずにどうするのか。
そう考え始めて数日が経っていた。
鹿沼が今いるのはB地方裁判所にある審議室。
時刻は15時29分。
鹿沼義一は目の前のディスプレイに映し出された動画に唸った。
部屋には、一般から集められた裁判員数名と裁判官、それに鹿沼がいて、言い渡すべき判決内容の最終確認をしていたところだった。
「裁判長、証拠映像に問題でも?」
そう言ったのは裁判員の一人で若い男性。呼びかけられた裁判長というのは鹿沼である。
鹿沼は顔をあげ、目をぱちくりさせた。
問題はある。
そう答えればいい。
映像がAIに作られたものかもしれず、もしそうであるとしたら、田原亜美の殺意も一から検証しなければならない。
なぜなら、
田原亜美が死んだのは事実。
包丁を腹に刺され死んだのも事実。
加えて、死んだ場所が、渋谷アーロンの自宅廊下であったことも事実である。
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