昼に想い、夜に夢見る

4/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「……って言うのが出会いかなぁ」 「へぇ。意外とロマンチックなんですね」 「意外って何よ、意外って」 縁側で隣に座っている(ゆめ)は「すんません」って笑った。 「満月を見ると毎回思い出すのよ、二年前のあの時のこと」 「素敵な思い出ですね」 そうね、と笑った。今日は中秋の名月。太陽暦ではもう九月が終わってしまうのだが、旧暦では一ヶ月前らしい。とてもその時期に月が見られるとは思えないのだが、昔の人が考えていることはよく分からない。 約二年前の出来事を思い出しながら、ポツンと浮かんでいる満月を見た。 「このことは内緒よ。誰にも話してないんだから」 「もちろんっすよ。二人だけの秘密っすね」 「いや、正確には四人だけどね?」 細かいですね、とぼやく夢のお腹にチョップした。横腹を抑えて転がっていたのだが、私は知らないふりをする。すると遠くから隣の金髪少年を呼ぶ声がしたので、お腹を抑えたまま立ち上がって消えて行った。 「……夏樹。これで、いいんだよね」 届かない声に反応するように、キラッと月が光った気がした。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!