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「……って言うのが出会いかなぁ」
「へぇ。意外とロマンチックなんですね」
「意外って何よ、意外って」
縁側で隣に座っている夢は「すんません」って笑った。
「満月を見ると毎回思い出すのよ、二年前のあの時のこと」
「素敵な思い出ですね」
そうね、と笑った。今日は中秋の名月。太陽暦ではもう九月が終わってしまうのだが、旧暦では一ヶ月前らしい。とてもその時期に月が見られるとは思えないのだが、昔の人が考えていることはよく分からない。
約二年前の出来事を思い出しながら、ポツンと浮かんでいる満月を見た。
「このことは内緒よ。誰にも話してないんだから」
「もちろんっすよ。二人だけの秘密っすね」
「いや、正確には四人だけどね?」
細かいですね、とぼやく夢のお腹にチョップした。横腹を抑えて転がっていたのだが、私は知らないふりをする。すると遠くから隣の金髪少年を呼ぶ声がしたので、お腹を抑えたまま立ち上がって消えて行った。
「……夏樹。これで、いいんだよね」
届かない声に反応するように、キラッと月が光った気がした。
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