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公園を飛び出し、一目散に賢治の自宅に向けて走る。走ればすぐにでも着くはずの距離だが、この時は焦りと夏の暑さのせいかとても遠く感じた。
実際、夏の暑い日差しの中で休み休みながらもずっと遊んでいたのだ。
身体も意識しないだけでかなり疲れていたのだろう。
「はぁはぁ……!ぐっ!急がなきゃ!賢治くんが!」
「あれ?望桃ちゃん?どうしたの?」
「祐奈ちゃん!?」
疲れで重くなった体を必死に動かして焼けた道を走っていると、突然曲がり角から女の子がひょっこりと顔を出した。
明るい声で話しかけて来たのは、友人の瀬田祐奈だった。
「祐奈ちゃん助けて!賢治くんが上級生たちに!」
「えっ!?わかった!私、賢治のとこに行くね。望桃ちゃんはどうする?」
「私は賢治くんの家にお父さんたちを呼びに行ってくる!」
「うん、お願い!」
瞬時に状況を理解した祐奈は一つ頷くと、賢治たちが争っている公園に向けて凄まじい勢いで駆けていく。
自分も悠長にしていられない。
すぐに望桃も賢治の自宅を目指して、脇目も振らず一心不乱に駆けていく。
やがて賢治の家に辿り着くと、チャイムを連打して中の両親へと必死に呼びかけた。
「はいはーい。あら、望桃ちゃんじゃない。どうしたの?賢治も一緒じゃなかったかしら?」
「ひっく……!うああーぁん!おじさん!おばさん!助けて!賢治くんが!賢治くんがぁ!」
「……望桃ちゃん落ち着いて。ゆっくりでいいから。少し汗もかいてるわね。お水飲みましょうか」
急かされるように中から出てきたの賢治のお母さんだった。その姿を見た瞬間、大人に会えた安堵から感情が溢れて泣き出してしまうが、お母さんは優しい声と柔らかな態度で落ち着かせるように努めた。
「落ち着いたかしら……。ゆっくりでいいから、話してみて?」
「すーはー……。うん……大丈夫」
少し落ち着いたところで望桃はようやく、賢治が自分を庇って上級生から守ってくれたこと、今も集団を相手に一人で立ち向かっていることを伝えられた。
何とも要領を得ない拙い説明だったが、それでも状況を察したお母さんはお寺で仕事中のお父さんに連絡を入れて、すぐに望桃と共に公園へと向かった。
「待たせた、香澄さん!賢治は?」
「あぁ、あなた。私たちも今着いたところですよ」
「そうか。望桃ちゃん、教えてくれてありがとう。賢治たちは中に?」
「うん。公園の中にいると思う……」
「そうか。行こう」
公園に到着してすぐ、お父さんも合流して皆で公園の中に入る。
「っ!?」
「なんてことだ……」
そこで目の当たりにした光景は三人の想像を上回る凄惨な光景だった。
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