十捌

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「それで、今日は依頼の件と聞いたがどうしたのかな?」 「実は昨日、自宅に封筒が届いたのですが……」 望桃は届いた封筒を取り出すと、会長の前に置いた。会長は「失礼するよ」と封筒を手にすると中の手紙を読み進める。 「同封された写真は別で保管しています」 「はぁ……。この手紙を目にする日が来るとは」 「……また?」 手紙を手にして会長は頭を抱えると渋い顔で望桃を見る。“また”という言葉が気になった賢治が問いかけると、望桃が代わりに答えた。 「実はこの手紙は二十年ほど前にうちに寄せられた依頼と同じものなのよ」 「その時に依頼をしたのは私なんだよ」 手紙の内容も、当時の記憶を思い返すと同じようなものだったようだ。筆跡だけは違うようだが。 「当時依頼を受けたのは、お爺さまたちよ」 「だから、手紙が新しいのに写真は古かったのか……。でも、爺ちゃんたちが受けた依頼がなんで今頃出てきたの?」 「お爺さまたちはあの写真に宿る霊を“祓うことできなかった”の。だから、封印という形でどこかに隠してしまったらしいわ」 「隠すって。燃やすことはできなかったの?」 「燃やすとどうなるか分からなかったの。写真という縛りから解放された霊がこの世を歩き回る恐れもあった。それくらい中にいる怨念は強いものだったのよ」 「そんな強い怨念がこの中に……」 望桃の話を聞いて想像以上に恐ろしい存在と関わっているのだと改めて実感した賢治は、鞄に視線を向けて息を呑む。
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