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「今、その写真はその中に?」
「えぇ。実は、知らず私は目を合わせてしまいました」
「なんてことだ!ヤツの目を見てしまったのか……」
会長は頭を抱えて顔をしかめる。その顔がどれだけ危険な状態であるかを示しているようで、賢治の胸は酷く動揺した。
「か、会長。そんなにまずい状態なんですか?」
「あぁ。まずい……。昨日届いたというが、見たのはいつ頃になるんだ?今日か?」
「いえ。昨日の夜です」
「ということは、あと二日と半日か」
「はい。そうなりますね。そこまでに何とかしないといけません」
「え?え?どういうこと?灰塚!“二日と半日”ってなんの事だよ!?」
話の見えない賢治は焦りからか、人前であることも忘れて少し声を荒らげてしまうが、会長は賢治の様子に何も知らされていないことを悟ったのか呆れたような視線を望桃へと向けた。
「キミは教えずにここに連れてきたのか。まったく、そんなところまで君たちのお爺さんたちと似なくていいだよ?」
「すみません。“お気入り”にはどうしても虚勢を張ってしまう家系みたいです」
「はぁ。そういうことをするから、ちょっとの誤解から大喧嘩になるんだろう……」
ヤレヤレと肩を竦めてため息を吐くと、昔も同じように祖父たちもよく喧嘩に近い状態になったことを注意された。
もっと素直に話すことも大切だと念を押すと、望桃も反省したのか「黙っててごめんなさいね、賢治」と頭を下げるのだった。
当然ながら、賢治は怒った。望桃に対して、ではなく、親友の危機的状況に気付けなかった自分自身に対してだ。
「また同じ間違いをするところだった。気付けなくてごめん、灰塚。夜中に電話をかけてきた時点で切羽詰まってることをもっと理解しておくべきだったよ」
「……もう。こうなるのが嫌だから、黙っていたのに。結局、あなたにそんな顔をさせてしまうのね」
「うまくいかないわね」と望桃はぐっと唇を噛むと、悲しむような視線を向ける。
「会長。灰塚が危険な状態なのは分かりました。話から察するに残り時間もおおよそ見当がつきました。実際、何が起きるのか。一体何が灰塚に呪いをかけたのか教えてくれますか?」
「……あぁ。私の知る限りの情報は教えよう。二十年前には叶わなかったが、君らならヤツを……のっぺらぼうを祓いきることができるかもしれない」
賢治の真剣な眼差しに、会長は一つ頷くと二十年前に起きたこととその顛末をつぶさに語り始めた。
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