弍呪

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会長からさらに詳しい内容を聞いて、屋敷を後にする。ここで手にした情報は大きく三つのこと。 一つ目は前回も祖父たちが依頼に絡んで解決に一応の解決の目を見たこと。つまり、この呪いは解呪することができるということだ。方法はまだ不明だが。 二つ目は呪いはお焚き上げしてしまうと、写真に宿る怨念が外に解放される恐れがあるということ。安易にお焚き上げはできない。 三つ目は大林治が言った“神の愛子(まなこ)”であったこと。神から賜った何かしらの力が解呪の鍵になると分かった。 「賢治の協力は不可欠だったということね」 「“神の愛子”ねー……。というか、その“カミノマナコ”てなに?」 「神の愛子。お爺さまの手記にも出てきたことがあるわ。たしか、元は現世に漂う魂を写す“神の眼(カミノマナコ)”から来た言葉よ。そして、大林家の祖先と関わりが深い土地神に愛されていたことから〈 神の愛子 〉と名乗るようになったようだわ」 手記には頻繁に出てくるそうで、この神の愛子という言葉は一種の言霊のように、それだけでチカラを持つのだろう。 「賢治たち、大林のものたちを護る言霊のようなものね。カミノマナコ。いい響きだわ」 「僕はぁ……中二みたいでむず痒く感じるよ」 「信じることで言霊はより強くなるわ。神の存在、神の力、神の無償の愛。その全てを信じ、口にしてご覧なさい。信じる者は救われる、から」 「それ、聖書の言葉じゃなかったっけ?」 「神であることに変わりないわ。どんな神でも、信じれば守ってくれるのよ」 「鰯の頭も信心からって?」 「えぇ。現に賢治には神様からのギフトが届いているわ。信じるには十分な理由だと思うけど?」 〈 この世ならざるものを視る眼 〉と〈 邪を祓う力 〉が賢治にある。眼には賢治が真に視たいものを写し、賢治が真に護りたいものがある時、邪を祓う力がその身に宿る。 その力の全ては、賢治の祖先から脈々と受け継がれたものだ。 賢治の祖父も賢治の父も賢治自身も、その力を大切に大切に守ってきた。神との契約。神との約束の証だ。
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