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屋敷に到着すると、二人で書斎へと向かう。
道中確認したが、やはり賢治の目には〈 怨念 〉の姿は写っていないようだった。
「なんで、視えないんだろ」
「呪詛の術式で対象以外が見えないように工夫されているのでしょうね」
「呪詛か……。詳しい人なら一人知ってるけど」
「〈 呪い屋 〉ね。アイツはまだ、この町にいるの?」
「うん。探し人がいるからね」
「そう。まぁ、あまり彼には借りを作りたくないわ。性格がアレだから、代償にどんなものを要求されるから分からないもの」
〈 呪い屋 〉は“呪い”の扱いに長けた術者だ。数百年前の呪術師だったらしいが、死ぬ間際に自身に呪いをかけて輪廻から脱したらしい。
今では怨念にも近い存在になっている。
今も生前の魂を変わらず保持して現世に留まり、大なり小なり事件を起こしては、賢治たちに撃退されている。
甘い言葉で人の心の隙間に入り込み、己の意のままに操ることを得意とし、今までに多くの人間を闇へと引き込んできた。
元は真面目一辺倒な人間だったが、長い時を身体を乗り換えながら無理やり繋ぎ止めてきた影響か、性格は少しづつ歪んでいった。
性格は至って残念なやつで、目的のためなら人類みな手駒程度にしか考えていない。ただ、気に入ったものにはつくづく脇が甘くなる。
「そうだねー……」
「まぁ、最後の手段として取っておきましょう。とりあえず、今はこの中にあるはずの手がかりを探しましょう」
「うーん……。人呼んでいい?」
「そうね……。さすがに数が多いわね」
ずらりと本棚に並べられたたくさんのファイルを眺めて、二人はこれから行うであろう作業を想像して少しげんなりするのだった。
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