弍呪

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しばらくして部屋に戻ってきた灰塚の手には銀のトレー。その上には小さなおにぎりが六つと、大きなおにぎりが並んでいた。 明らかに、一つだけ異様にでかい。 形もなんだか三角のような、丸いような歪な形をしている。 ところどこから、エビフライのしっぽや唐揚げのような一部とハンバーグが見えた。 とにかくでかい。まるで爆弾だ。 「昼食にしましょう。賢治はこれね」 案の定、望桃から手渡されたのは爆弾おにぎりの方であった。 「お、おお……でかい」 「丹精込めて作ったわ」 「えっ?灰塚が作ったの!?」 「えぇ。料理はあまりしないのだけど、貴方への感謝を伝えたくてやってみたわ」 ただ歪な形がちょっぴり恥ずかしく感じているのか、おにぎりを受け取った賢治の顔をまともに見ることができなかった。 「嬉しいよ。ありがとう。とても美味しそうだ」 「う、うぅ……。そんなにまじまじと眺めないで?早く済ましましょう」 「うん。いただきます……ん、んん……んん……うん!美味しいよ!」 恥ずかしそうにする望桃を見て、祐奈は小さく笑みを零すと「やっぱり恋敵(ライバル)は手強いなぁ」と誰にも聞こえない声で呟くのだった。 昼食後 ー…… お腹が膨れて 少し元気を取り戻した望桃たちは、気を取り直して調査を再開する。 タイムリミットまで、あと二日と半日。 余裕を見せる望桃の横顔と腹に感じる満腹感が、賢治に少しだけ落ち着きを取り戻させるのだった。
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