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会長の依頼を受け、家を出たところで賢治がふと足を止める。そのまま空を見つめると、「お願い……」と呟く。
するとどうだ。
一陣の風が三人の間を吹き抜け、門から抜けていくではないか。
その瞬間、風の音に紛れて微かに聞こえた数人の声……。
耳元で聞こえたそれは確かに聞き覚えのある女の子声だった。
「今のは、守護霊の古城さんかしら……?」
「古城さんを中心に九人の霊が、歩美さんを探すために動いてくれたよ」
「九人……あれ?守護霊って今は十一人じゃなかったっけ?」
祐奈の疑問に賢治は背中を指差して、「こっちも何があるか分からないからね」と笑って答える。
「ちなみに残ったのって……?」
「一人はあの空き家の子だよ」
「あぁ……。あの子もまた強力な念の持ち主だったわね」
つい最近、賢治大家族に入った女の子。
瓶ずくしの廃墟から連れてきた彼女だ。
いつか成仏できる日を願って、今日も賢治の背中で徳を積む日々を送っている。
「あと一人は?」
「……あぁ。なるべく使いたくない切り札。狂気に満ちた状況でしか輝けない飛びきり狂ったJOKERさ」
さっきとは反対の肩を叩いて、賢治は苦笑を浮かべると門から外へと出ていった。
その背中からジトリと嫌な気配を一瞬だけ感じた望桃と祐奈は、少し怪訝な表情を浮かべて後を追いかける。
「なるべくとっておきたい」ではなく「なるべく使いたくない」と、賢治は言った。
そのことに、二人は否が応でも思い出される。
全ての運命を狂いに狂わせ、それでも悪びれることなく高らかに笑う怨念。〈 呪い屋 〉の存在がありありと思い出された。
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