弍呪壱

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「あなたが祠から写真を持ち出したんですよね?」 「はい……」 「どこで知ったんです?あの祠に写真が納められたのは随分と昔のことだったはずですが」 「幼い頃、父と祓い屋さんが話しているのを聞いていたんです。その時に写真に封じられているバケモノの話も知りました」 (中に何がいるのかも知っていて、手を出したってこと?) 何が封じられているのか知らないまま触れてしまったのかと思っていたが、そういうわけではないようだ。 「危険なものだと知っていて、持ち出したんですか?」 「はい」 「はぁ……。“この世ならざる存在”は、軽い気持ちで触れていいものではないんですよ?」 「軽い気持ちなんかじゃありません。私は本気で、あいつらを呪ってやるつもりだったんです!」 望桃の言葉が癪だったのか、伏していた視線をあげると、キッ!と睨みつける。 その目は今までの歩美からは想像できないほどに憤怒の色に染まっていた。 「呪いですか。誰かを恨んでいたんですか?」 「それは、あなたには関係ないでしょう」 「は?関係ないわけないでしょう?どんな理由があろうと、あなたが解放した呪いが巡り巡って私に移っているのだから」 この落とし前をどうつけてくれるのかと望桃は歩美の胸ぐらを掴むと、その身を引き寄せて驚いた顔を覗き込む。 とても高校生とは思えない迫力に気圧され、歩美は思わず息を飲んでしまった。 「まぁまぁ、灰塚さん。落ち着いて」 「瀬田さん……」 身を固くして震える歩美の様子に、これ以上の脅しは逆効果だと判断した祐奈は、二人の間に割って入ると望桃を落ち着かせる。 ただ、友人を危険に晒した相手に祐奈も何も思わないわけではない。 「でもまぁ、そうだね。少なくとも、呪いを解放してしまった責任はとってもらわないと。まずは、呪いを解放した経緯を説明してもらえますか?」 「はぁ……包み隠さず話してください。意外なことが解呪に繋がることもありますから」 「は、はい……」 望桃を宥めつつも、振り返った祐奈の顔にはいつもの元気な笑顔は浮かんでいなかった。 二人の迫力に気圧された歩美は思わず頷いた。
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