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「悩んでいても仕方ないわね。やれることはやってみましょう 」
それでもダメなら、また封じるしかないわ。と望桃は一つ頷き、部屋を後にしようとする。
また、どこかに出かけるのかと賢治と祐奈は後について行こうとすると、待っているように言い渡された。
「どうしたんだろね?」
「休憩かな?」
「そうだよね。ずっと気を張りっぱなしだもんね」
少しでも自分たちも何か手助けできるならと、目を通した文献や手記を再度開いて、手がかりになりそうなものを探る。
そうこうしていると、扉がノックされ中に家政婦の菊池さんが入ってきた。
手にしたトレーの上には軽食と飲み物があった。
「灰塚は休憩してますか?」
「いえ。お嬢様は今、祓いの準備をされています」
「なるほどね。確かに過去に爺ちゃんたちが試したからって、今回もダメってわけじゃないもんね。僕も今できることを探ってみよう」
「そうだね。私もいざって時は動けるように……今は腹ごしらえしておこーう!ふふ……!」
「あ、こら!ユウ!」
シリアスな空気を一変。祐奈の明るい声と共に、軽食のサンドイッチが一切れ二切れと消えていく。
いや、それどころか何故か、十切れはあったはずのサンドイッチは物の見事に消失していた。
「え!?あれ!?いつの間に!?」
「あらあら!ふふ……!皆さんお腹が減ってらしたのね」
「え!?いや、皆さんていうか……食べたのユウだけ……」
まだ一口も食べてない賢治は、何が起きたのか分からず目を白黒。
すぐに追加を用意しますね、と菊池さんは何だか少し嬉しそうに扉の向こうへと戻っていった……。
「ユ、ユウーー!人様のお家で遠慮なさ過ぎだろ!全部食べるなんてあんまりじゃないか!」
「もぐもぐ……ん?へ?私、まだ二切れしか食べてないよ?」
「んなわけないでしょ!十切れ近くあったじゃないか!」
「失敬なー?私だって遠慮くらい知ってるもーん」
ぶぅーと、頬を膨らませユウは飲み物に手を伸ばすと、サンドイッチに持っていかれた水分を補給する。
ストローを口にしたまま、ボソリと『そんなこと言って、本当はケンちゃんが全部食べたんじゃないのー?』なんて呟くもんだから、賢治はさらに目じりを吊り上げてユウを睨む。
今にも飛びかからんとする賢治と、迎え討とうと身構えた祐奈。
一触即発ならぬ『一食即発』の空気で部屋が静まり返った時だった。
ーもぐもぐ……
ーもぐもぐ……
ー もぐもぐ……
ー もぐもぐ……
ーもぐもぐ……
突然、部屋に何者かの咀嚼音が響き渡る。
それも一人ではない。複数人の咀嚼音と唸るような声が部屋の中に響いていた。
「……ケンちゃん。これってもしかして」
「……何もないところでの怪奇音……霊障?霊……まさか!?」
音の正体に気付いた賢治は慌てた様子で背後を振り返った!
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