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「皆さまをお連れしました」
「ありがとう」
段々奥へ進むと、やがて薄暗くなって来た。
そのまま突き当たりの部屋へとやってくると古い木戸を静かに開けて菊池さんは中へと声をかける。
中から望桃の声が聞こえると、中へと皆通された。
入った瞬間、香の強い香りが賢治たちを包み込む。
中に入ると、祭壇のようなものと向き合う望桃が出迎える。
服は着替えたのか、滝行の時に着るような薄手の白い衣を纏っていた。
蝋燭に照らされたその姿はとても神聖に見えるが、同時に身体のラインがはっきりと浮き出てしまい否が応でも望桃の女性らしさを強調してしまっていた。
「こ、ここは?」
「祓い部屋よ。お祓いや祈祷なんかの依頼を行う特別な場所。修行にも使ったりするわね」
意識しないように、二人は望桃の身体を極力視界から外して部屋を見回す。
灰塚の話では、この家は元々土地の力が強い場所に建てられており、さらに強い一点にこの部屋が位置するように造られているそうだ。
さらにこの部屋の床下には、とても恐ろしいモノが封じられているとか何とか。
何分、建てたのは御先祖の頃の話しなので真偽も不確かな内容らしい。
「ここに来たってことは……」
「えぇ。お爺様の手記には祓うことはできなかったとあったけど、私なりにやれることはやってみようと思って」
伝聞情報では漏れもある。やはり、一から十まで自身の目で確認してみなければ分からないと望桃は小さく笑ってみせた。
「たしかに、灰塚のいうとおりだね。昔とは変わってることもあるかもしれない。僕らも協力するよ」
「うん。私も!任せて任せて!」
「二人ともありがとう。早速始めるわ」
それから小一時間ほど、望桃先導で〈 祓えの儀 〉が行われたーー……
「はぁああぁーー……」
「……ダメだったか」
「もー。ほんと、強情な呪いだね……」
ぐったりとその場に倒れ込む望桃の様子を見て、賢治と祐奈も深くため息を吐いて緊張を解いた。
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